大騒動のただ中に一式の緋色の具足を背負い大槍を手にしたとても貧しい身なりの男が現れた(君恩を忘れずして忠臣城に入)
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大騒動のただ中に一式の緋色の具足を背負い大槍を手にしたとても貧しい身なりの男が現れた(君恩を忘れずして忠臣城に入)

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それではあなたは私がわからない,いとこ梅(?)!私がよく扇屋に見えると思わないか(菊の香の奥におくある匂ひかな)

ああ,旦那様,お会いできてうれしいです!母上はとてもあなたのことを案じておられました(郷右衛門老母に暇を告んと古郷に帰る)

原殿は少し悲嘆を押さえうやうやしく手紙を開けて読んだ(かねてより君と母とに知らせんと人よりいそく死出の山道.原元辰)

斧(斧寺)殿は右側に輝く海越しに一瞥して言った:入江の奥まったところに映されて富士山の雪に覆われた山頂が見える(波間より伊豆の海つらさゆる日の光りをかへす不二のしら雪.秀和)

彼女の雇い主はほほえんで彼女をじっと見ながら返事をした:心配するな,撫子(?),私はこの男たちを私に引きつけるつもりだ(大星以前所々へ贈る遺書或ひは辞世など認む)

夫の文を見ると涙が雨のように落ちる(秀和が妻吾嬬の消息を見る毎に愁情胸に滝つ)

彼は彼女と彼らの眠っている赤ん坊を見ながら血涙が頬を伝って手の上にしたたり落ちた(夫婦心を異にして別離を悲しむ)

男たちはこれを聞いて涙を流し彼に決心を再考するよう懇願した(夜討と決して両個の家僕を花洛に帰す事実曽我物語なる鬼王団三が別れに等しかるべし)

caption 大騒動のただ中に一式の緋色の具足を背負い大槍を手にしたとても貧しい身なりの男が現れた(君恩を忘れずして忠臣城に入)
note Au milieu de cette confusion, on vit apparaitre un homme tres pauvrement vetu, portant sur le dos une armure de couleur pourpre, et ayant a la main une formidable lance.
book title 浪人の忠誠(忠義浪人):日本歴史小説(いろは文庫)
author タメナガ シュンスイ ( 為永 春水 )/(Tamenaga, Shunsui, 1790-1843)
year 1882
Library Number PL/798/Ta
author 000161042
GID GG061012
PhotoCD no. 332057