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本の一冊を彼の方にさし出しながら彼女は叫んだ:”大石殿,私たちはこれよりよいものを期待していました”
彼は筆をとり,刀に寄りかかって体を前にかがめて書いた(あれはみな同し心と丁の連.春貫)
家に入ると彼はあわただしく自分の娘を婦人に手渡した(小児を頼み置て忠勇死地に走入る)
屋敷中混乱の場となった(武士の道一筋や夜の雪.三雲)
”これを,私の最後の贈り物を兄上に差し上げてくれ”(玄蔵厮者市助に逢ふて忠志を告る)
”市助,この大騒ぎの真実を知っているか”(伊左衛門義士の夜討を聞て玄蔵が音信を待)
”奥方様,私は元老のところから参りました”(美少年の鉄石心安保山に美名をあぐ)
大石殿の辞世.”あらうれし(たのし)おもひははるる身はすつるうき世の月にかかる雲なし.よし雄”