オトコ 1964年 福島県 山で日が暮れた帰り道、ひとりの男と道連れになったが、どことなく変で気味悪いので、先へ歩かせておき、すきを見て木によじ登った。みおろすと男はぐるりぐるりと木の周囲をめぐっているので、そのまま明るくなるのを待った。男の姿は消えていた。
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オンナ,タヌキ 1929年 長崎県 老人が隣村からの帰りに、前からやってくる女と会った。知り合いの女だったので声をかけたが、女は笑うだけだった。狸だと気づいた老人は、女の行く手を阻んだ。キャンといって飛び上がると、女の姿は消えていた。後日、老人がまたこの道を通って目的地に行こうとした。全く着かないのでおかしいと思っていると、正反対の方向に進んでいて、山の頂上に座っていた。
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(リンシタイケン) 1964年 福島県 話者の祖父が三十三歳の時に死にかけた時の話。おとぎの国のような赤や青の光のするきれいなところを歩いていた。途中何度も名前を呼ばれたので、あちこち隠れながら三途の川を渡った。川幅は広いが浅かった。その向うの死出の山も丘みたいなものだった。向うは一面の平野で花畑、その向こうにすばらしい鉄の門と御殿があって、赤鬼と青鬼が立っていた。通してくれと頼んだら、「お前はここに来るのは早すぎる、帰れ帰れ」と怒られ、金棒を振り下ろされた、と思ったら息を吹き返した。
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オオヒト 2000年 新潟県 ある夜、山道を歩いていたら大人に行きあった。大人は裸身で髪は肩に垂れ、星のように目が光っていた。驚いて立ち止まると、大人も驚いて立ち止まり、道を横切って山に去っていった。これも山男だろう。
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オオグチナワ 1968年 奈良県 昭和18年頃、炭を焼いている人が山を歩いていたら大蛇が現れた。大蛇は人の気配に驚いて木に巻きつき、首を立てて睨んだ。その人は怖くなって逃げ出し、やっとの思いで小屋に逃げ戻った。
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カワウソ 1976年 新潟県 1935年前後のこと。ある人が夜道、自転車を押して上り坂を登っていると、背が高く顔が驚くほど白い、縦縞の着物を着て網笠を被った女が、杉の木に寄りかかって横顔を向けていたので、怖くなって夢中でハンドルを握ってしまったら、自転車が壊れて崖から落ちてしまった。カワウソの仕業かもしれない。
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キツネ 1938年 鳥取県 昭和2年の夏に富士山に登った。登り終えて下っている時、五合目付近で追越される人々の顔が知人に見えはじめ、三合目で小屋についた時には自分の村に帰ったような気分になり、自分の家の所存を尋ねるなどした。他の登山者に「狐にだまされたのだろう」と言われ、我に返った。
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カミカクシ,キツネ 1943年 山形県 昭和17年6月頃、少し頭の変な男が行方不明になった。3日後月山で発見されたが、男は狐に騙されて年寄り夫婦と美しい娘のいる家に一晩だけ泊まっただけだと言った。
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ヤマノカミ 1989年 鹿児島県 山の神は女性なので、男の人は山に入るときにある程度身なりをよくして行くが、夫が山へ入るときにいつも身なりをよくしていくので、妻が山に誰かいい人がいるのではないかと思って様子を見に行ったところ、夫は谷淵できれいな女の人に支えられて仕事をしていた。妻が声をかけると、女の人はぱーっと消えて、夫は谷に落ちて死んでしまったという。
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キツネ 1963年 岡山県 西山から小西への帰り、山の上に火が見えて「助けてくれ」と女の叫び声がしたので近付くと、後ろから目隠しをされた。その手から逃れると日が暮れて真っ暗で、自分の知らない山奥にいた。「ホーイ、ホーイ」と叫びながらほうほうのていで山を下った。人にきくと「狐にだまされたのだ」と言われた。
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ヤマオトコ 2001年 青森県 釣りをしていたら暗くなってきてしまったので、その日はそのままそこに泊まることにした。すると、寝て一時間ほど経ってから、「起きろ」と声をかけられた。着物の袖から声をかけた者を見ると、髭の沢山生えた大男だった。それは山男であっただろうと言う。
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ヤマオトコ 2001年 青森県 釣りをしていたら暗くなってきてしまったので、その日はそのままそこに泊まることにした。すると、寝て一時間ほど経ってから、「起きろ」と声をかけられた。着物の袖から声をかけた者を見ると、髭の沢山生えた大男だった。それは山男であっただろうと言う。
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キツネ 1938年 長野県 1930年ごろ、お爺さんが家に帰ろうとしたが、あるはずの道がなくなっていた。
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ヤマンバ 1932年 愛知県 文明年間のある8月の夜、郷士が犬を連れ狩りに出た。犬が騒ぐので弓を用意しながら尾張富士の頂上の本宮の社へ出た。そこには身の丈1丈あろうと思われる大女が拝殿に向かって立っていた。矢で射ると地が揺らぎ、不気味な風が吹き、血の跡を残し女の姿はなくなった。その跡を追うと知り合いの家へ続いていた。何か変わった事はないかと問うと、妻が今暁から病気であるという。寝床を確認すると姿は無く、和歌が書き付けられていた。
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オンナ 1960年 福島県 毎日山奥できれいな女が笑って通るのを不思議に思った山師は、女の後をつけて呼び止め、女に連れられて着いた先で三日ぐらいとても楽しくすごした。家に帰ると風景は一変していて、三百年の月日が流れていた。土産の箱を禁を破って開けると、山師は消えた。
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キツネ 1973年 岩手県 1930~40年頃のこと。ある人が山の中で化かされて迷わされ、思いもよらないところに連れて行かれた。狐の仕業。
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トメゴ 1985年 高知県 極道の男が山に入って帰ってこなかった。捜しに行くと、男は山の主だと主張した。きつく叱ると、ひっくり返って元に戻った。昔、恐ろしい風貌をした爺が山奥に住んでいた。仕事をせず他人と会うことを嫌っていたことを思い出した。
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ヒノタマ,ヒトダマ 1985年 愛媛県 明治30年頃、筆者の母は「夕方ゴーッと音がして少し明るくなったので見上げると、屋根の軒ぐらいの高さを人の頭くらいの大きさの青白い火の塊が尾を長く引きながら棟の方へ飛んで行った」のを見たという。
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カワウソ 1938年 石川県 ある雪の夜、家路を急ぐ男であったが、いくら進めど自分の村につかない。夜明けを待とうと腰を下ろしていると、すぐ近くで汽車の汽笛が鳴った。それで我に返った男は、自分がてんで見当違いのところまで来ていることに気づいた。
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キツネ 1981年 和歌山県 戦争中のこと。煮干の行商人が箱屋峠で若い女に会い、追いつこうとして秋葉山の頂上に連れて行かれ、朝になってある家の日章旗が上がるまで目が覚めなかった。茨を歩いて足が血だらけになっていた。
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