クギョウニバケタムジナ 1956年 宮城県 百五,六十年程前の話。地方巡検にきて泊まった公卿が余りに魚類を食べるので家人が魔性のものかと怪しみ,風呂に入れてみた。節穴から覗くと大きな狢が一匹風呂桶の縁に立ち,尻尾を湯の中に入れたり出したりしていたので,家人は相談の上鉄砲でこれを射殺した。家人が戸を開けて中に入るとやはり公卿の姿だったので驚いたが,故老の言葉に従って翌日朝日に照らしてみると,大狢の姿に還った。この古狢は京都のある寺に棲んでいたのが奥州に下ってきたのだと言う者もいる。畠山家と階上村の近藤家には,お公卿様が書き与えられたという護符の掛軸がしまってあるといわれる。
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キツネ,タヌキ 1999年 福岡県 ある百姓の女房のもとに、狐か狸のような獣が男に化けて通い、女房は妊娠した。女房は出産したが、その後女房は死んでしまった。化物ではなく、ある男だったという風説もあった。
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ウジガミ,クロゲノヨウカイ,ヒヒ 1934年 静岡県 氏神の祭日の数日前になると、年頃の娘のいる家に白羽の矢が立ち、人身御供とされた。旅の僧がこれを止めんとして、真夜中に見張っていると、黒毛の妖怪が出てきて「信濃の国の悉平太郎に知らすなよ」と言うのを聞いた。僧は悉平太郎を探し、翌年大犬を一匹伴ってきた。犬は狒々と戦いこれを倒した。
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カッパ,カイブツラシキモノ 1928年 福岡県 元禄の頃の話。ある女房が雪隠に坐っていると、怪物らしきものの手が尻を触った。翌日も同じようなことがあったので、刀を持って入っていた女房がその手を切り落とした。数日後、夫の枕元に河童が手を返してほしいときたので、その場で手を接がせ、接骨法を聞いて返してやった。翌朝、庭先に礼の鱸があった。
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ウシオニ 1992年 山口県 牛鬼が美童に化け女と戯れていた所を待ち受けていた主が弓で射た。牛鬼は血を流して鬼が城山へ逃げて死んだ。今でもその墓から蝿に似た虫がだいぶ出てきて、人に取り付くという。
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オオカミ,オオキナイヌ 1976年 大分県 昔、東林庵の墓に狼が出た。墓を掘ったり人を襲ったりするので、村人が弓矢で退治しようとしたができなかった。村の年寄りが東林庵にこもって百万遍を唱えていると、どこからともなく大きな犬が現れて、狼を3匹食い殺してくれたという。
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セヨモンババ 1952年 兵庫県 ある時戦帰りの侍が古い家で休んでいると、夜中に「せよもんばば、せよもんばば」と声が聞こえるので起きた。近付くと猫たちが踊っていた。侍が化け猫だと思い斬りかかったら猫は逃げた。翌日村に出てせよもんばばの家に行くとそこの老婆が怪我をしているという。それは猫が化けたもので、縁の下から人間の骨が出てきた。
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サルカミ 2000年 昔々、白羽の矢が立てられた家が娘を献上することになったが、山伏がたすけてくれることになった。丑三つ時に神社の神様の後ろから化け物が現れた。娘の入った唐櫃の周りを踊りまわり、蓋を開けようとしたとき、山伏が連れてきた犬が放たれ、化け物をかみ殺した。夜が明けて化け物を見ると、年をとった猿であった。
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クモ 1936年 岐阜県 ある長者の家に蜘蛛が住み着いていた。ある時お産があったが、産部屋の戸が開いていた為蜘蛛がその様子を見てしまった。生まれた娘が年頃になると蜘蛛が美男の八百屋に化け娘を連れて行った。二人の居場所を突き止め蜘蛛を風呂の中で殺して娘を取り返した。
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カッパノヒデンセッコツヤク 1956年 岩手県 旧仙台領江刺郡の北上川畔二子町城下に住んでいた小田島大炊之助という侍の家で,夜厠に女中衆が入ると怪物が出て悪戯をする。主人が夜上厠してみても何事も起こらないので,女装して屈んでいるとやがて冷やりとしたこわばったものが触ってくる。大炊之助がそれを捉え,隠し持った短刀で斬り離すと怪物は叫び声を上げて逃げ去った。よく見るとそれは水掻きのある痩せた腕であった。それから三日目の夜,夢現の中で化生の者が大炊之助の枕上に現れた。跳ね起きて脇差を構えると,化生の者は平伏して「この河の鎧が渕に棲む河童だが,向後悪戯はせぬゆえ腕を返して賜れ」という。切り離した腕を返しても仕様があるまいというと,それには秘薬があるからというので,秘薬の処方と引き換えに腕を返した。河童は妙薬を取り出し,見事に腕を継ぎ合わせてみせた後,その処方を伝授し,帰っていった。手負いの者の治療に大変もてはやされたが,代替わりの後はさほどでもなくなった。
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キジョ,イケイノモノ,ヨウカイ,レイキ,アクリョウ 1977年 江戸小石川で享保12年4月、ある家に妻として入った人の周りにその家の代々の霊が昼夜の隔てなく鬼の形にようになって現れ、妻を取り殺そうとしたところ、代々屋敷の鎮守をしているおまん稲荷により助けられた。
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イジュウ 1974年 京都府 延宝年間のこと、京の南にある吉祥寺村で、吉祥天女のご開帳があるというので、近隣の村々から六斎念仏を行う者が多く集まった。その彼らが打つ鐘や太鼓の音を恐れたのか、怪獣が出てきて、ある百姓の家の縁の下にかけ入った。それを生け捕りにすると、顔は狸に似て、鼻から額まで黒く、うなじは白い。さらに背は黒く、腹は白く、徳利のような丸い尻をしており、尾はなくて前足はモグラのようで、後ろ足は長く犬のような獣だった。餌は串柿だけ食べたという。
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オニバアサン 1990年 千葉県 人骨山に住む鬼婆が節分の日ごとに人年貢(人身御供)を取りに来たので村人が難儀していた。旅の「六角」の助言で近江の国からドン太郎という犬を借りてきて、その犬の助けで鬼婆を退治した。
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イヌガミ 1914年 徳島県 ある女が犬神に憑かれて病気になった。兄が犬神持ちの家に行くと、庭に箕が伏せてある臼があり、その中に犬が11匹いた。湯をかけて犬を殺すと、病気は徐々に平癒した。
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イキリョウ 1982年 島根県 大きな家の納屋の2階を借りて寝泊まりをしていると、毎晩、苦しくて目が覚めるようになった。ある晩、目を開けると、真っ黒い大きな四角い顔をしたものが胸を押さえており、小さな目が2つあって、体には黒い毛がいっぱい生えているのが見えた。手刀で切りつけると姿を消した。家の主人には長い間病気の息子がいたが、これ以後次第に快復していった。
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オニ 1963年 徳島県 昔ある所に仲の良い夫婦がいたが、女房が魚と大量の飯を食うので怪しんだ夫が、隣に住む神主に偵察させると、女房の正体は頭の割れる鬼であった。正体を知られた鬼は男達を食い殺そうと追いかけたが、生えていた蓬と菖蒲で殴られると倒れてしまった。
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〔ホウソウバア,ホウソウババ〕 1956年 宮城県 文化年間(1804~17)の初め頃、疱瘡が流行して多くの人が死んだが、その亡骸が墓から掘り返されて食い荒らされるという奇怪事が起こった。大石を載せたり、祈祷をしても無駄で、足跡は大人の腕ほどの大きさで、怪物の大きさが推量された。名主が自分の息子の亡骸を守るため、猟師に番をさせると、気配を感じ取ったのか、怪物は柴木立を薙ぎ倒して逃げ去った。その後威嚇して打たれた銃の音に驚いたのか、その後は疱瘡もはやらず、怪物も現れなかった。2,3年後、2人連れの女房(50ばかりと30ばかり)が市日の買い物に出かけたが、山の方を見ていた老女が突然顔色をかえて倒れた。介抱の結果息を吹き返したが、失神の理由を聞いても老女は答えなかった。3年ほどたってから老女は「あのとき丘の上に一丈余りもあるような赫顔に白髪の覆いかぶさった老婆に似たけものが大石に腰掛け、睨むように自分を見下ろしていて、これが死人を食っていた怪獣かと思ったら力も心も抜けたような感じになった。正気に返ったあとも恐ろしく、口にするのもはばかられた」と語った。
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カイブツ 1999年 福岡県 ある百姓の女房が、男に化けた怪物と密通した。女房はやがて妊娠した。そして手足が長く毛が少し生えたものを死産した。女房は出産して7日後に死んでしまった。
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ヨウカイ,バケモノ 1980年 三重県 勢州の津にある堀という家に妖怪が起こり、家の中のあらゆるものが動き回った。しかし武勇優れた主人は全く恐れなかったので、主人がどこかに行く時だけ妖怪があった。そうして1ヶ月余り経つと、最初は怖がっていた家族も全く気にしなくなったので、妖怪は止んでしまった。
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ウスギヌヤマノヨウカイ 1956年 宮城県 上沼村の東北部北上川の近くに薄衣山という岡があり、そこは村の墓地で人家はなく、老松が茂って昼も薄暗いような場所で、得体のしれない妖怪が出て人々を怯えさせていた。この山の南方の弥勒寺村(中田町)に、剣道の心得のある豪胆な米三という若者がおり、化け物退治を決意した。病臥している妻を理由に家人が引き止めるのも聞かずに出かけ、松の大木にのぼって見張っていると、使いの者が「妻が命を落とした」「出棺だ」と迎えに来た。米三はそれを怪しみ、もし本当だとしても、どんなことがあっても退治するまでは家に帰るまいと決心したので我慢して帰らなかった。暫くすると我が家の方向から弥勒寺の方へ妻の葬儀と思われる提灯の行列が見えた。妻の亡霊とおぼしき白いものが飛んできて、恨み言を言い足元に手をかけるばかりになったとき斬り払うとギャッという叫び声がして、ドドッと転がり落ちる響きがした。朝になって降りてみると夥しい血溜りがあり、血痕が北上川まで続いていた。家の妻は生きており、それ以後怪異はとまったという。
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