レイケン,カミナリ 1975年 謙信秘蔵の太刀が3振りあった。その内の竹股兼光という刀の元の持ち主が、山中を通っていると、雷が落ちてきそうな様子だったので、刀を頭上にかざし目を塞いでいたところ、しばらくすると空が晴れた。太刀や頭・衣服は血に染まっており、雷は落ちたものの、太刀の威徳で無事だったものと思われる。
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ライジン 1921年 戸次道雪が木陰にいると俄に掻き曇り落雷したので庭中を遁走した。道雪は刀で雷と思しきものを切っていったが、自分も身体を損じた。また、上杉謙信の太刀のひとつ兼光は、ある百姓が雷をよけようとこれを頭上に差し上げたところ、切先が血に染まっていた。雷をきったに違いないということになり、謙信のものとなった。
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マモリ 1979年 ある時馬丁が川で馬の世話をしていたところ、突然彼が暴れだして手のつけようが無かった。ようやく捕らえると、藪孤山が彼に尊きお守りを貸そうといって、包みものを首にかけてやった。すると正気に戻った。後で中を見ると角細工の根付だった。
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キツネ 1956年 宮城県 藩政時代,角田館主石川家の家臣で館矢間にいる若侍達が,城下での稽古から帰ってくる途中魚などを持っているとよく狐にだまされた。ある時若侍達が,竹刀の先に魚を結び付けて夜道を無事に帰ってこれるかどうか賭けをしようということになり,一人が竹刀を持って出かけていった。朧月夜の並木道に差し掛かると,向うから竹刀を肩にした武芸者風の大男がやってきて,すれ違いざまにいきなり打ち込んできた。若侍が思わず竹刀で受け止めると大男は消え失せてしまったが,気がつくと竹刀の先の魚の包も無くなっていた。
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ワラシベチョウジャ,ウワバミ 1968年 愛媛県 年の暮れに、貧乏人が藁3本を持って旅に出た。葱を洗う女に藁をあげ、三年味噌をもらう。その味噌をやって寺に泊まる。和尚が味噌を隠すが、小僧が教えて錆刀を持ってくる。夜に大蛇を退治して和尚に金をもらい、家に帰って節季の払いをしたという。
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キツネ 1971年 岐阜県 ある娘が腰元奉公をしていて殿様のお手つきとなり、刀を拝領して杉平集落に下がってきて、刀を洞に隠した。その後、キツネに憑かれた人が「刀がある」といって探したところ、この刀が出てきた。
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ホウ,カイブツ 1976年 静岡県 徳川家康が駿河にいた頃、ある朝庭に肉人とでもいうべき小児くらいの大きさのものが現れた。遠くに追いやったが、ある人が言うにはそれは封(ほう)というもので、食べれば多力武勇になるという。
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ナナフシギ,マメイシ 1932年 静岡県 汐見坂に落ちている豆石は、大きさも色も煎った大豆そのままである。昔今川勢がここで戦争したときに天から降ったものだといわれていて、七不思議の一つにかぞえられている。
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ダイシサマ 1982年 新潟県 11月23日は大師講の日である。大師様が中国から小豆を盗んできたところ、それを発見され、ヌルデの大木の3ツ又に隠れ、難を避けた。そのためにヌルデの箸を使い、小豆はわらじの中や耳の穴に隠して持ち帰ったという。その折に塩たき釜の中に片足を踏み落とし、火傷をしたために片足が不自由になった。
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ワビスケグラ 1956年 宮城県 槍持ちの侘助は稀代の酒飲みで、あるとき殿様の飲めるだけ飲んでみよとの仰せに、大盃を見事に傾けるうち頓死した。殿が典医に命じて腑分けをさせたら、腹の中から大きな甕が出てきた。この甕を二之丸の紙蔵に保存したのでそれを侘助蔵という。
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タントウ 1979年 藪孤山の長女は幼少の頃から病持ちだったが、一年前にまた病気が発症した。薬も効かなかったので、藪孤山は短刀を袋にし長女の枕もとに恭しく置き、これは我が家に伝わる宝剣で、邪鬼を避け、疾病をのぞくという。その日から長女は熟睡し、病も癒えた。後で見ると普通の刀であった。
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(ダイジャ) 1958年 香川県 数代前の大隅家の主人が川で魚を獲っていると、何だかわからないが大きなものがいたので恐ろしくなって家に帰ったが、家の戸棚にあったはずの短刀が鞘から抜けてなくなっていた。短刀は川のほとりの御所柿の木に突き刺さって大蛇を刺し殺していた。
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レイケン,ユメ 1983年 東京都 小石川諏訪町蕎麦切横町に住む折原岩之助が、文政9年3月16日に見た夢によると、神田小柳町あたりの道具屋に希代の霊剣があるとのことだった。同じ夢を数度みたので同月21日に道具屋を尋ねるととても古びた剣があった。そこで購入した晩の夢に、甲冑の上に白い装束を着た人物が出現し、様々な剣の徳を述べ、夢は覚めたという。小倉五郎源宗広の銘があり、470年ほど前の剣だったという。
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カタナカケノマツ 1979年 岐阜県 ある人が刀掛け松の下で刀2本を拾って帰ったら、夜になると箱の中で切り合いの音を出したので恐ろしくなり、元のところに返したが、祟りがあってその一族は死に絶えた。後に近所の人が供養のお宮を建てたという。
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ウジガミサン 1965年 高知県 氏神さまを信仰したおかげで助かった人がいる。室戸から大きな漁船に乗ることになり、出立の朝にヤナギカケを作った。しかしその皿が引っくり返り、気持ちが悪いのでやめにした。次の日には、お宮の前で扇子を忘れたのを思い出して取りに帰った。出直して、またお宮の前でハンカチを忘れたのに気づいたが、そのまま出航した。しかしどうにも気持ちが悪いので、女房が引返すように電報を打ち、須崎から帰って来た。その船はそのまま行方不明になってしまった。
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セリザワノサラヤシキ 1956年 宮城県 昔,芹沢という者が武芸の腕によって禄とこの土地を賜った。それから三代後の当主の時の話。ある正月,同家の女中が主人秘蔵の錦手の皿十枚を箱に納める際,一枚を落とし毀してしまった。しばらく隠していたが遂に露見し,一刀のもとに斬り殺された。その後毎夜のように同家の水屋に女中が現れ,「一枚,二枚,三枚・・・九枚・・・おお・・・」と恨めしげに訴える。主人は自らの仕打を悔い,女中の霊を慰めるために石地蔵を刻み,自分の山の頂に建てた。また不吉の刀を地中に埋め,小祠を建てて祀ってやった。以後女中の声も聞こえなくなったという。今でもこの山を地蔵山と呼ぶ。なお旧芹沢家には別人が住んでいるが,その後は何の変事も起こらないという。
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ゲンベエブチ 1956年 宮城県 昔1人の僧が、毎年盆中に米ヶ袋の家を歩いて棚経をあげ、盆棚のお下がりを馳走になっていたが、何年たっても年を取る様子がない。ある年、またやってきて一軒の家で麦飯を馳走になる。そばで3,4人の若者が下の渕で毒流しの相談をしているのを聞きつけ、盆中の殺生は止めなされと固く戒めて帰る。源兵衛という者が跡をつけていくと僧は渕の中に消える。源兵衛が毒を流すと大鰻が浮んだので割いてみると、腹の中から麦飯が出る。
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カタナカケノマツ 1979年 岐阜県 ある人が刀掛け松の枝に掛かっていた刀2本を持って帰ったら、夜になると箱の中で切り合いの音を出したので恐ろしくなり、お坊さんに供養を頼んだら「埋けて弔え」と言われた。しかし祟りがあってその一族は死に絶え、その松も枯れてしまった。その家の倉だけが残っているという。
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ヒキウス,オンナ,ヌマノヌシ 1929年 岩手県 昔、遠野の孫四郎が閉伊川の腹帯ノ淵のほとりを通ると、淵の中から一人の若い女が出てきて、一封の手紙を差し出し物見山の沼の主まで届けてくれるように頼んだ。途中で旅の六部が手紙をよいように書替えてくれ、それを相手に渡すと小さい石の臼をくれた。それに米粒を入れて廻すと黄金の粒が出た。孫四郎はその臼で長者になったが、女房が欲を出して、臼は無くなった。
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カッパノヒデンセッコツヤク 1956年 岩手県 旧仙台領江刺郡の北上川畔二子町城下に住んでいた小田島大炊之助という侍の家で,夜厠に女中衆が入ると怪物が出て悪戯をする。主人が夜上厠してみても何事も起こらないので,女装して屈んでいるとやがて冷やりとしたこわばったものが触ってくる。大炊之助がそれを捉え,隠し持った短刀で斬り離すと怪物は叫び声を上げて逃げ去った。よく見るとそれは水掻きのある痩せた腕であった。それから三日目の夜,夢現の中で化生の者が大炊之助の枕上に現れた。跳ね起きて脇差を構えると,化生の者は平伏して「この河の鎧が渕に棲む河童だが,向後悪戯はせぬゆえ腕を返して賜れ」という。切り離した腕を返しても仕様があるまいというと,それには秘薬があるからというので,秘薬の処方と引き換えに腕を返した。河童は妙薬を取り出し,見事に腕を継ぎ合わせてみせた後,その処方を伝授し,帰っていった。手負いの者の治療に大変もてはやされたが,代替わりの後はさほどでもなくなった。
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