オナンガブチ 1991年 山梨県 昔、おなんという下女が粗相をして主人に叱られ、桂川の支流に身を投げた。これをおなんガ淵と呼ぶ。その後、村人が膳椀何人前と書いて、付近の岩の上に置いて頼むと、翌朝その数だけ用意された。ところがある時、10人前借りて5人前しか返さぬ人がいて、その後は貸さなくなった。その膳が淵の近くの神戸和彦氏方と都留市夏狩町の宝鏡寺に保管されているが、それは黒い漆塗りで、それに朱で稲の蒔絵が描いてあるという。
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オナン,フチノヌシ 1962年 山梨県 おなん淵には膳椀貸しの伝説がある。それは、昔おなんという下女が叱られてこの淵に身を投げ死に、その後、淵の主にお願いすると膳椀を貸してくれるようになるが、ある時数を違えて返したために、以降貸さなくなった。今でもその返さなかった膳が、鹿留の光照寺と神戸和市氏方に保管されている。
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リュウグ,リュウグフチ,(シンジョ) 2003年 山梨県 桂川の杵岩近くの深い淵を竜宮淵とよばれ、あそこに落ちてしまった1人の百姓が、淵の底に神女に会って、「何でも欲しい物の名を紙に書いて淵に投げいれるが良い」と神女にいわれたという。
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ゼンワンフチ 1961年 山梨県 笛吹川の一ノ釜を膳貸淵ともいい、人寄りで膳椀が入用の時には何人前貸して下さいとお願いすると、滝壺から浮いてきて貸してくれた。使用後にはお礼の供物を添えて投げ入れた。ある時数を不足して返した者があったのでそれ以来は貸さなくなった。
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(ワンカシブチ) 1987年 山梨県 都留市鹿留町のおなんガ淵では、人寄りがあって多数の膳椀が必要の時、淵か川に行って頼むと、翌朝それだけの数が岸の岩の上においてある。用済の器具はよく洗ってお礼を言って岩に置くといつのまにかしまわれる。しかし、心のよくない者が返すときにその数をごまかしたり、壊して返したのでそれからは頼んでも貸さなくなったという。10人前借りて返さなかった5人分の膳が、今でも民家と夏狩の宝鏡寺に保管されているが、黒い漆塗りの膳に朱で稲穂の絵が描いてあるという。
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ワンコブチ,リュウ 1989年 長野県 昔、村人は何かあるたびに淵の主である竜から椀を借りた。いくつ貸してくれと頼むと、その数だけ淵の底から出てきた。ある人が借りた内の数個を返さなかったため、以来、淵の主は椀を貸してくれなくなった。わんこ淵はおお淵といい、小道木地区にある。
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オゼンイワ 1989年 長野県 大岩の下に清水が湧き出ていて、それが小さな池を作っている。村人が岩に「明日お膳を10人分貸してください」と言うと、翌朝池に浮いていた。ある時ある人が借りた膳を全部返さないでいると、その後はいくら頼んでも貸してくれなくなった。
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ジュウゼンブチ 1989年 長野県 じんごんの橋の上に十膳淵はある。村人が膳を欲しいときは、淵に行って必要な数を頼むと、翌朝には揃っていた。皆借りて使っていたが、欲深な者が十膳借りて九膳しか返さなかった。それ以後、誰が借りに行っても貸してくれなかった。
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(ワンカシブチ),カッパ 1991年 山梨県 お地蔵淵は別名巴淵ともいい、底の岩の根に河童が住んでいた。村の人寄りの時には膳椀を貸してくれたが、ある時、お膳を返さない人がいて河童は怒ってそれ以来貸さなくなった。その人は謝罪のためにその膳に商売道具のノミを1丁載せて返したがききめがなかった。
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ヘビ,ツエ,ヒメ 1928年 愛知県 膳椀淵という膳椀を貸してくれる淵があった。あるとき、小坊主が竃の中へ小石を投げ込んだら、淵の底から姫が現われて杖をくれた。小坊主が杖を池に突くと、杖は山かがしに変わった。
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カワランベ,(カッパ) 1989年 愛知県 話者の実家にはかっぱが持ってきてくれた椀があった。川原の淵のそばの橋で、「お膳何枚貸してくれ」と言うと、岩の上に並べて貸してくれた。用が終わって岩の上に返して礼を言うと、誰にも見られないようにして淵の中に入れてしまったという。
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ホトケワダ 1963年 茨城県 八溝川の仏わだという淵に頼むと御椀を貸してくれたが、返すときに足りないまま返したので、もう貸してくれなくなった。
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オナンブチ 1989年 山梨県 オナンという下女がいて、お膳かお椀を壊し、主人に怒られてオナン渕に身を投げて亡くなった。その霊がいるので、「お膳を何人貸してください」という手紙を流すとあくる朝にはその通りお椀とお膳が浮いていた。しかしずるい家があり返さなかったので貸してくれなくなった。その返さなかったお膳というのが光照寺にある。
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ワミブチ 1989年 長野県 葬式やお祝いの時に膳や椀を貸してくれと書いたものを和見淵に放り込むと、淵に椀が浮かんで貸してくれた。ところがあるとき壊した椀をそのまま返した。以来、淵は椀を貸してくれなくなったという。
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カナシブチ 1979年 岐阜県 かなし淵に椀が浮いていたので、借りていって返さなかった。それから貸す椀がなくなったのでかなし淵と言うようになった。
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(ゼン,ワンヲカスフチ) 1975年 愛知県 田代川上流にある茶臼という場所で「お膳とお椀を十人前貸してください」と頼むと、翌日には揃っていた。ある人が一人前少なく返したので、それから貸してくれなくなったという。
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カシゼンワン 1936年 岐阜県 日和田に滝のように水の落ちるところがあり、一の滝という。昔は膳椀が必要なときはここで頼めば翌朝に必ず川岸の岩上に頼んだ数だけ膳椀が置いてあった。しかしある時傷をつけて返したものがいて以後借りることができなくなった。
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オウタカミサ,(ワンカシブチ) 1991年 山梨県 村内に人寄せがあって、膳椀が不足なときには前の晩に往太神様の前の池に行ってお願いして翌朝行くと必ず浮かんでいた。ある時、不心得者がいて仲間げんかをしてお椀を割り、不足のまま池に返したので神様は怒ってそれ以来頼んでも聞き入れなくなった。
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ワンカシブチ 1971年 岐阜県 宇藤橋の滝の淵を椀貸淵と言う。拝むとお椀やお盆を貸してくれたが、欲深な人が盆を返さなかった。その人はボンジュウというあだ名になった。
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シンジャ,イケヌシ 1974年 富山県 越中蓑谷山の縄池で、貧乏な者が宴用の器が無い事を池の傍で呟いたところ池から朱椀朱膳が現れた。以来人々の願いに応じて食器を貸してくれたので家具貸の池と呼ばれるようになった。ある時老婆が返さなかったら洪水により老婆は死に、食器は貸さなくなった。
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