テング 1974年 和歌山県 ある雨の日、高野山の金剛三昧院の下人が住職を迎えに来たが雨具を持っていなかった。しかし雨に濡れないので住職が下人に正体を尋ねると、下人は門前の杉と楓に住む天狗であり、「住職の行跡が貴いので仕える。今から寺に火難はない」と言って飛び去った。
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ハクイノソウ 1954年 鹿児島県 ある女性が先手川で洗濯をしていると汚い白衣の僧が来て宿を尋ねた。本家の場所を詳しく教えてやったが、その僧は本家に泊まらず、その姿を見たものもいなかった。ところが、それから女性の家の天井から時々銭が落ちてくるようになった。
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カミサン,ヒノタマ 1930年 石川県 山の小高い所に神さんが住んでいて、村に不幸があるときにはお知らせがある。地滑りの時にも、その二三日前から火の玉が飛び、地滑りの晩は火事のように明くなった。
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(シノシラセ) 1967年 栃木県 1935年頃、寺の住職が一時いなかったときのこと。留守居の人が、死んだ人が知らせをする音をたびたび聞いた。お勝手の戸の開く音がすれば女、玄関で靴や下駄の音がすれば男だという。
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ガッパ 1954年 長崎県 川に住むガッパが憑いて「天道様がこうおっしゃった」などと言うものがいる。その人の息子が天道様の信心で足が治った。誉める人もおり悪口を言う人もいる。
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テング 1922年 神奈川県 たびたび天狗にさらわれたといって諸所の霊山にお参りして、御札を持って返ったものがあった。高い所を飛ぶ時に目を開けていると、星が大きく見えたという。このことがあってから村にいる時も、跣足で笹薮を歩いても、笹の切り口が足に刺さらなかったという。
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〔ハンテイシモヤシキノオンビョウ〕,ネコ,マクラガエシ 1956年 東京都 只野真葛女の祖父丈庵が獅山公隠居屋敷に勤めていた時の話。久しく人の住んでいなかった山を開いて邸宅を建てたためか,移り住んだ当座はどこからともなく拳大の石が長屋に投げ込まれることがあった。昼夜の別はなかったが,特に雨降りで暗い夜などに多かった。他に宿直の侍が枕がえしをされたり,灯火が突然消えたり,蚊帳の釣り手が一度に切れて落ちたりすることもあった。ある時,典医の丈庵が命ぜられて宿直をしていると堪らなく眠くなった。それでも何とか薄目で見ていると大きい猫か狸のような獣が現れ,途端に蚊帳の釣り手が一度に切れた。以後は何事もなかった。翌日は昼夜時々鉄砲を撃たせて威嚇したが,日中二度ほど大犬程で尻尾の太い赤毛のものが庭前の林の梢をとび渡った。鉄砲を浴びせたが,逃げ回って姿を消してしまった。その後このような怪事は減少したが,ある時御長屋門の下の辺に犬くらいの猫が眠っていたので,近侍の者が鉄砲で打ち殺した。この辺りは特に野良猫が多い所であった。
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ユウ,レイ 1993年 香川県 四国遍路の際お堂に泊まると、夜明けに女の幽霊が現れて「7月7日に女の子が生まれるが、火か水の中で死ぬ。人を焼き殺すか自分が死ぬかする」と予言する。9年後、女子は近所の子を焼き殺してしまい、長生きだが不幸な人生を送った。
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ホウザワコウゼンインノヌケクビ 1956年 宮城県 根白石村の興禅院は正徳年間までは朴沢山の中腹にあった。その頃住職が夕方の読経をする度に抜け首が現れて襟首を冷たい舌で舐める。和尚はなおも読経を続けたが,ついに寺を現在の場所に移した。その後,村の人が朴澤山から帰る途中元のお寺跡の所で抜け首に遇い,驚いて家に逃げ込んだが熱を出して三日目に死んでしまった。その人の孫は現在も同所に住んでおり,興禅院の現住職もこのことをよく知っている。
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コウボウサン 1975年 愛知県 足が木の老婆のところに旅人が来た。泊めて欲しいというので貧乏だから泊められないと言うと、車屋から食べられるだけ取ってこいと言われた。足が木なので跡が判ると言うと、旅人は雪を降らせてやると言った。老婆の木の足跡は見えなくなった。旅人は弘法さんだったという。
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キツネ 1975年 長崎県 皇后が病気で倒れ、対馬の天道法師が呼ばれた。天道法師が祈祷をすると、キツネが憑いていた。狐は天井を突き破って逃げた。逃げたキツネはどこかに行き、石に化けて付近の人を苦しめていた。その石を玄翁という和尚が割って退治した。それで玄翁と言うようになったという。
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テング 1989年 静岡県 国清寺の和尚が子どものころ、夜おしっこにでたら天狗にさらわれて愛鷹山に連れて行かれた。いろいろ変わったものを食えといわれたが、結局寺の屋根に戻された。
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アブラボウ 1965年 滋賀県 昔湖東の金剛寺に、毎朝本堂の観音様に燈明の油を差しにいく坊さんがいた。ある日坊さんは禁じられた遊びがしたくなり、燈明の油を盗みお金を作った。ところが遊びに出かけようとした時、ふとした病気が元で重体となり死んでしまった。その翌日から山門に坊さんの幽霊が出るという噂が広まった。その幽霊は手に油を持って、本堂に登って行くが、かすかな声で「油返そう、油返そう。わずかなことに、わずかなことに」とつぶやいているという。今でもこの油坊はでるという。
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シリョウ 2002年 山口県 昭和58年の夏、アマ漁をしていると、海底の岩場に子供の靴が挟まっているのを見つけた。子供にちょうどよさそうなので持って帰ろうかと思ったが、結局そのままにして漁を終え家に帰ると、子供の様子がおかしい。診療所に連れて行ったが埒が明かず、法華寺の住職に伺いをたてると、子供の霊が憑いているという。何か心当たりはないかと尋ねられたので、靴のことを話すと、原因はそれで、靴の持ち主が憑いたのであると言う。早速住職に祈祷してもらい死霊を成仏させたら子供は元気になった。
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ヤマウバ 1940年 和歌山県 毎夜、住民が寝静まる頃に山姥が来て風呂を自分で焚いて入浴していた。山姥は白髪白衣で、人々は恐れていた。ある人が「風呂のカテ(椽)に牛の糞を入れておくといい」と言ったのでそうすると、山姥は来たけれども風呂に入らずに帰ったという。
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ヘビ,カンノン 1989年 長野県 じんがの下に住んでいた医者が、村人の栄養不良を憂えてねずみなど捕って動物性たんぱく質をとるようにすすめた。するとその家の老爺の夢に蛇が現れ、自分たちの餌が無くなるから止めろと言った。しかし止めなかったところ、医者の息子が蛇に底なし沼に引きずられそうになった。助かったが、その日の夢に蛇が出て今度は「止めないと皆殺しにする」と言った。村人は蛇を退治することにして、護摩を焚き観音を頼むと、蛇が雲を引いて舞い上がったという。後に医者の老爺は亡くなったという。
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イキリョウ,ツキモノ 1922年 京都府 村にお梅という娘があった。あるとき娘は養子を迎えたが、養子はその母親とできてしまった。それから母は娘をいろいろ苦しめたが、娘がふと憑き物に疲れてしまった。百万遍の僧が理由を尋ねると、母の生霊が憑いていることがわかった。憑き物は落ちたが娘は衰弱して死んでしまった。
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カネ,エンノギョウジャ 1928年 静岡県 長福寺の門前に貧しい山伏がいた。大峰修行の際、ある老僧から援助を受けていたが、その老僧が入滅後に後を継いだ住職は、金銀を惜しみ、撞鐘で役立つならもっていけといった。その晩、山伏の枕もとに白髪の老人が現れ、峰入は心配するなといって消えた。次の日、鐘がなくなっていた。住職が山伏と一緒に大峰に行く途中の夜、山鳴りがして大岩の上に鐘が引っかかったという話を聞いて見に行くと、寺の鐘であった。老人は役行者の化身であった。
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リュウ 1936年 滋賀県 昔、清涼寺の井戸に龍が住んでいた。その龍は鐘を嫌ったので、撞かないようにしていた。しかし、どうしたことか、ある日鐘が鳴った。すると龍は怒って天上してしまった。
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ムジナ 1933年 長野県 夜更け、安国寺のお堂の戸を叩き「こんばんは」といって起こす者がいた。けれども戸を開けても誰もいない。同じことが毎晩あった。ある晩、声がすると同時に戸を開けると、狢が屋根の上に跳び上がっていった。
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