フナユウレイ、モウレンブネ 1956年 宮城県 黄昏時になると,沖の方からホーイホーイとこちらに呼びかける声が聞こえ,灯がちらちらと見える。やがて「桶貸してけれ」と無気味な声が聞こえてくると,漁師達は「もうれん船だ。亡霊船だ。」と囁き合って逃げ支度に入る。静かだった海がうねり始め,霧が立ちこめてくる。「桶貸してくれ」という声がなおも追いかけてきて,海霧の向こうにうっすらと船の形が見える。とても逃げ切れないと思ったら,アカ桶の底を抜いて投げてやる。そうしないと海水を掛けられて船が沈むか,暗礁に乗り上げて難破する,と今でも漁村の老人は信じている。
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フナユウレイ 1973年 富山県 魚津市では舟ユウレイのことをボレコンという。イカ釣りの漁期に一人でイカ釣りをしていると目の前に現れて「アカトリ貸してくれ」という。その時はアカトリの底を抜いて投げると消える。
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ウミボウズ 1983年 長崎県 海坊主は舟へ来てアカトリを貸せという。貸さないと船を沈めると脅す。アカトリを貸すと海の潮を船に汲み込んで船を沈める。一説には死んだ人間の魂という。こうした災難に遭わないために漁師は船に船玉様をまつって祈願を込めた。
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ボウレイ 1973年 富山県 海で死んだ人の亡霊の多くはユウレイ船に乗って出現する。富山湾では「アカトリ貸せ」と言って船の進路を遮る。これでアカトリ(舟中に溜まった水をかき出す道具)の底を抜かないで貸すと水船にされるので必ず底を抜いて貸す。
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モリ 1989年 鹿児島県 夜、火をともしながら漁に出るとモリという化け物に遭うことがあった。モリは海で死んだ人が成仏できずにこの世をさまよっているのだというが、夜通し船のそばへ来てグズグズ言った。モリは雨の夜に出て船にたまるアカを汲むひしゃくを貸せという。その時は底をぬいたひしゃくを貸さないと海水をひしゃくで汲まれてしまう。
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カゼ 1956年 宮城県 風に貸し借りなしといって、西風が吹けば翌日は東風が吹く、北東風の吹く時は不漁などの俗信がある。
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イソユウレイ 1933年 長崎県 五島有川では、船幽霊を磯幽霊と呼ぶ。磯幽霊はよく島になるが、その島には波が打ち寄せず、暗い時でも見えるという。アカトリ(柄杓)を貸せと言われたら、底を抜いて貸す。そうしないと、水を入れられて船を沈められる。鯨などの大きいものになれと言うと、そのようになるという。あまりに出てうるさい時には、握り飯を投げてやるとついてこないという。
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モウレンブネ 1956年 宮城県 ある漁船が暗夜帰港の途中,前方で掛け声が聞こえた。一隻の船が近付いてきて,口々に船が沈みそうだからアカ取り(船の水を掬う桶)を貸せという。よく見るとその人たちは額に三角形の白いものを付け,白装束を着ているので,モウレン船(亡霊船)だと思いアカ取りの底を抜いて投げてやった。こうしないと水を掛けられ沈没させられる,或いは近付いていくと座礁させられるという。
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モウレイ 1982年 宮城県 モウレイは「柄杓貸せ、桶貸せ」と言ってくるが、貸すと船に水を入れられて沈められてしまう。貸すときには、底を抜いて貸さないといけない。霧の多い日に出てきて、モウレイが見える人と見えない人とがいる。
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モウレイ 1992年 宮崎県 海上の亡霊は盆の13日、16日、八十八夜の長雨の時には必ず出ると言われる。「ひしゃくを貸せ」といってくるのは、仲間を増やしたいため。ひしゃくは底を抜いて渡さなくてはならない。
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ウミオショウ 1976年 風と共に現われ、人の形を成し、口は耳まである。人を見て笑う。強風で波が高い日に現われ、船が転覆する恐れがある。
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ハマユウレイ 1952年 石川県 夜、磯釣りや漁をしているとき、誰もいないにも関わらず、「オーイ、オーイ」という呼び声が聞こえる。人々はこれを浜幽霊(ハマユウレイ)だとするが、正体は実のところアシカの鳴き声である。
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フネ,コエ,レイコン 1970年 神奈川県 南風で波が高く、大雨が降っているとき、夜に声や和船の音が聞えてくることがある。猟師にしか聞えないのかもしれないと言われる。帰れ帰れと霊魂が知らせているのだという。
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ユウレイセン,ボウコン 1929年 鹿児島県 大島では、毎年二百十日前後に、暴風がある。その時沖に出ていると漁夫は突然のストームに襲われ、毎年死ぬものが出てくる。夜の航海は幽霊船や亡魂がつきまとうので、たいていの島の人たちは之を怖れている。しかし中には幽霊船に慣れて、少しも驚かぬ者もいる。
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ユウレイ 1956年 東京都 トビ(漁)に出ると霊魂が昼は小さな魚、夜は幽霊になって船の人に憑き、「水をくれ」「煙草をくれ」と言わせる。
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アメ 1965年 岩手県 山中の池に人影がさすと、雨が降るという。
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オオキナコイ 1983年 長野県 猟をしている人が山に入ると、雨が降ってきた。堤の横には大きな鯉がいたので撃ち取ると、更に雨が降ってきた。しっかりせねばと思っていたら晴れてきた。この人は魔がさしたと思い、鉄砲を一切持たなくなった。
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フナユウレイ 1973年 富山県 小雨の降る晩はユウレイ船が出る。たえず行く手に現れては消えるので小雨の晩の漁を嫌う。
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マボロシ 1940年 大分県 漁のとき、舵をとられていると「柄杓を貸さんか」と言われることがある。このときに底を抜いた柄杓を貸さないと潮を汲み込まれる。これは海で死んだ人間で、幻のようなものの仕業。
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モウレイ 1982年 宮城県 ある船がモウレイにアカドリないかと言われた。沖から戻る船がその近くを通ったら、自分の船に自分のアカドリで水を入れていた。海でアカドリを貸せといわれたら、底を抜いて渡すという。
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