ネンブツイヌ 1974年 東京都 文化12年頃、江戸の本町河岸に奇妙な牝狗がいた。この狗は常に法師などが軒先で木魚を打ち鳴らして読経念仏していたら、その後に付いてワアワアと吠えながら数町も送りゆくという。人々は念仏いぬなどと呼んでいた。ある武家の人がこの狗を飼おうといてもらい受けた。鉦鼓読経の声も聞こえず、他の犬と変わらなく、数年して病気で死んだという。
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イヌ 1976年 岡山県 備中のある村に変わった犬がいて、まるで人の言葉を理解しているかのようだった。ある時、庭に入っていたので叱ったら、それ以来二度と入らなくなった。食べ物でつって呼ぼうとしても絶対に入らない。またある時は、上から飛んできた鶏に驚き、思わずかみ殺してしまったが、主人にののしられ、追い出されてから、近くの河原で3日間じっとしていた。隣家の者が連れて帰ろうとしても、主人の怒りを恐れて帰ろうとしない。結局そのまま隣家に飼われるようになった。乞食が来れば吠えて入れようとしないが、なくなと言えばなきやむ。追いかけて行けと言えば、どこまででも追いかけていく。よしと言うとやっと帰ってきた。
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ムジナ 1989年 静岡県 ある寺の僧が、やたらに犬を嫌って遠ざけていた。正体はむじなであった。その僧の書いた題目などが、寺宝として残っている。
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シロイヌ 1975年 大阪府 和泉国堺の浄土宗の寺に白犬がいた。勤行の時には堂の縁に来て平伏し、修行者が道を歩いていると裾にまとわり付き吠えていた。ある師走に餅を搗き、白犬に与えたら、のどに詰めて死んでしまった。和尚は哀れに思い戒名を授け弔った。すると住僧の夢に犬が現れ、念仏の功徳で人間になれた。門番の妻に宿ると述べた。門番の妻は間もなく懐妊し男児を生んだ。男児は聡明であったが、餅を嫌ったので、犬の生まれ変わりだと、人々は白犬とあだ名した。男児があだなの由来を僧に聞いたので、僧は経緯を話し、餅を食べたら呼ばれなくなるだろうと言った。男児は、餅を食べようとした日に行方不明になった。
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タヌキ 1989年 静岡県 名主の家に鎌倉建長寺の僧が来た。やたらに犬を嫌って遠ざけた。飯の時に人を寄り付けない。安倍川で犬に追いかけられたとき、正体を現して狸になった。
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ユウレイ 1983年 新潟県 寺の前の家の犬が夜吠えたので、人が来たのかと思って出て見ても誰もいない。再度吠えたのでまた出て見ても誰もいない。寝ようかと思ったところに檀家の人が亡くなったと告げ人が来た。犬は人の死を感じていたのだろうか。
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(フメイ) 1989年 静岡県 小瀧という家に鎌倉建長寺の僧が来た。飯の時に人を寄り付けない。村の大きな犬が食いついて駕籠からくわえ出すと、正体を現した。なにか獣が化けていた。
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ゴトク,イヌ,コウボウダイシ 2001年 青森県 弘法大師が行脚していた頃、犬は3本足で、五徳は4本足で四徳と呼ばれていた。大師は動かない四徳の脚を、1本犬の脚にしてやった。犬は大層感謝し、その後は大師にいただいた脚を上げて小便するようになった。一方、四徳の方へは徳を1つ増やしてやり、五徳とした。
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ネコ 1975年 静岡県 遠江国蓁原郡御前崎の西林院の僧が猫を助けた所、その猫が寺にいついた。ある時寺男が縁側で昼寝をしていて、猫も隣で庭を眺めていたところ、隣の家の猫がやってきて寺の猫を伊勢参りに誘った。しかし寺の猫は、住職に危険が迫っているからと断った。夢現で聞いていた寺男は不思議に思ったが、その夜、天井裏で大きな音がした。4、5日前から逗留している旅僧の雲水はその音にも起きてこなかった。翌朝天井裏を見ると、寺の猫と隣家の猫が血を流し倒れており、その傍らで雲水の服を着た大きな鼠が瀕死の状態でいた。
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タヌキ 1989年 静岡県 上多賀の飴倉という家に鎌倉建長寺の僧が来た。犬が嫌いで、飯の時に人を寄り付けない。天竜川の近くで犬が僧を食い殺すと、正体は狸だった。その僧が書いた何かの証文が残っている。
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オイヌサマ,オウサキ 1981年 埼玉県 三峯様を祀る祠を造ったが、飼い犬を放したところ祠の前できばを出して唸ったかと思うと尾を巻いて逃げ出し、小屋に逃げ込んで震えていたという。お犬さまは本当にいるという。お犬さまを迎えるとおうさきは逃げるという。
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ロウビョウ,ヨウ 1976年 静岡県 遠州の宝蔵寺の老猫が寺僧に化けて諸獣と法問を行う。
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タヌキ 1989年 静岡県 ある家に鎌倉某院の僧が来た。沼津で犬に食い殺されたとき、正体を現して狸になった。その僧の書いた鷹などの僧画が残っている。
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マショウ,ヤマイヌ 1991年 香川県 山中には魔性の通る道があり、家路を急いでこの道を通るとしても大きな音がする。その時山の神に助けを求めると必ず犬が現れて道案内してくれるという。
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テン 1941年 新潟県 何も知らない僧がやってきて、参詣が少ないや賽銭のことに対して不平を言おうものなら、就寝後に耳などを抓ったり、蒲団に巻いて部屋を転がしたりする。これは寺の貂がやるのである。
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テング 1982年 群馬県 迦葉山の天狗は寺の小僧に化けて住み込み、いろいろと奇異な行動をした。
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タヌキ 1975年 静岡県 伊豆と駿河の間を行き来する僧がいた。この僧は絵が上手だったので、多くの人がそれを求めたものの、沼津で犬に噛まれて死んだという。その死骸を見ると、僧に化けた狸だった。
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タヌキ,タヌキノヒッセキ 1973年 東京都 武州多摩郡国分寺村のある者の家に、狸の書いた書がある。京都紫野大徳寺の勧化僧が来て、無言の行中であると言った為用事は書を使って済ました。家の者は有難い僧侶だともてなしたが犬に喰い殺されて狸の姿をあらわした。
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ウジガミ,クロゲノヨウカイ,ヒヒ 1934年 静岡県 氏神の祭日の数日前になると、年頃の娘のいる家に白羽の矢が立ち、人身御供とされた。旅の僧がこれを止めんとして、真夜中に見張っていると、黒毛の妖怪が出てきて「信濃の国の悉平太郎に知らすなよ」と言うのを聞いた。僧は悉平太郎を探し、翌年大犬を一匹伴ってきた。犬は狒々と戦いこれを倒した。
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ミチビキイヌ,コウボウダイシ 1935年 和歌山県 弘法大師が帰朝し弘仁7年密教禅院を開創しようと巡礼中、大和国宇智具にやってきたとき白黒2頭の犬を連れた狩人明神に出会い、地形についてたずねた。狩人は紀州伊都郡の南に霊地があるとして2頭の犬を先頭にして進むと突然丹生都比売神が現れ山上に導いた。その時老松の上に大師が唐から投げた三鈷金剛杵が燦然と輝いていた。大師はその利験を喜び霊場を開いた。導いた犬を伝えて導き犬という。
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