コエ 1937年 福島県 明治44年のまだ暑い頃の夜11時ごろ、ホーイという人の声がした。何の姿も見えなかったが、3回目がすぐ頭の上でして、同時に周囲の樹が張り裂けたかと思うほど激しい音がした。バタバタと小山に上るようだったが、何も変わったことはなかった。
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オト 1964年 福島県 明治34,5年ころ、三人でたぬきとりに古峰神社のある山に登った。賽銭があったので拾い集めていると、発動機船のような「どどどど」という音が遠くから聞こえ、だんだん近づいて「どどーっ」と雪の落ちるような大音がきこえたという。驚いて逃げ帰ったが、神様のいましめであろうということである。
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ムジナ 1990年 長野県 明治時代の話だが、水汲みの喜助という人が山中の小屋で一人暮らしをしていた。ある雪の晩火にあたっていると、「喜助のほおっぺた」と声が聞こえる。たぬきかむじなのよばりあいだと思ったので、「そういうやつのほおっぺた」と言い返した。だんだん近くから聞こえるようになり、これに負けると食い殺されるので、火にあたって暖かいので盛んに言い返した。声はだんだん小さくなって消えた。朝、戸口でむじなが死んでいた。
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テング 1943年 山形県 ある夏の非常に月の良い晩、1時半頃に大勢の人が声高に喋りながら登ってくる声が聞えたが、翌日尋ねてみるとそんな者はいなかったといわれた。天狗の道中というものだろうと気味悪くなり、それからしばらくは夕方になると妙に淋しい気分になって困ったという。
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アヤカシ,ヤマノカミ,コエ 1992年 広島県 戦後すぐの頃、山へ木を採りに入ったら2,30人が叫んでいるのが聞こえた。呼ばれるように声の方へ向かったが、次々違う方へ声の聞こえる場所が変わった。般若心経を心の中で唱えながら歩いていると声は消えた。
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テングノキタオシ,タイボクニオノヲアテルオト,タイボクノタオレルオト,カイオン 1982年 新潟県 長野県境の布目という山地に小屋を建てて木を伐りにいった。若い衆5人、御飯をする女衆2人でいった。小雨が降る晩の夜中に遠くからカーン、カチーンと大木に斧をあてる音がしてきて、音はだんだん近づき大きくなり、メリメリメリ、ザーッと大木の倒れる音がした。小屋にのしかかってくるような音で、おそろしかった。その音は小屋にいる全員が聞いたという。朝に外へ出てみると大木などは倒れていなかった。これは、天狗の木倒しという怪音だといわれている。
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タヌキ 1991年 愛媛県 話者が山で木を切っていると大きな音がする。誰か松でも切っているのかと見に行くが、なにもない。炭焼きのために泊まり込んでいると、山の中から「おーい、おーい」と呼ぶ。返事をしても誰もいない。そこで罠を仕掛けると、次の日狸がかかっていた。
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ヘンゲ 1938年 福島県 5、60年前日が暮れて山小屋にいると、ホーイと声をかけられたので、ホーイと答えた。すると馬鹿でかい声でホーイと返ってきたので、これはヘンゲだと思い、6人で出来る限りの大声を張り上げたが、今度はさらに物凄い声で怒鳴られたので、皆顔色を失って屋内に逃げ入った。また、小屋を揺さぶられたこともあった。
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テングタオシ 1955年 岡山県 山崎助四郎老人が若いとき猟師について勢子にいった。山の窪みを通っていると、突然ザーという音があたり一面から起こった。辺りはにわかに暗くなったようであった。話に聞いていた天狗倒しがこれだと思って頭を抱えてうつぶしていたら間もなく音は止んだ。
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コエ 1975年 広島県 備後国深津郡引野村で文政2年3月、百姓の家の榎の根の地中から、人のうめき声のような声がする。その家では息のように、3,4町離れるとよほど大きく聞こえる。次第にかすかになり、ついに止んだ。その後も変わったことはないという。
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タヌキ 1981年 和歌山県 ある姉妹が沢に薪拾いに行ったら、頬かむりをした人が「こっちへ来い」と呼んだ。姉が「狸だ」と気づいて、沢を降りて逃げた。
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オトコノコ,タヌキ 1982年 広島県 明治40年頃のこと。雨の日に大浦から宮盛へ帰るとき、鬼谷の方を通ると10歳くらいの縦縞の着物を着て豆絞りの頬被りをした男の子が「おーい、おーい」といいながらやって来た。近付くと生臭かったので怪しんで清水まで行き振り返ると後を追ってきていた。里に出るともう追ってはこなかった。
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カワウソ 1985年 愛媛県 兄が明治43年の初冬頃、夜遅く六角堂の前を通り田圃道へかかると「夢の夢こそザザザザザ」と歌が聞こえてきた。ふと気がつくともう一歩で田の中へ落ちるところだった。すると今までの歌声は聞こえなくなり急に砂がバラバラと飛んできた。かわうそだろうといっていた。
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ヤマノカイイ 1931年 長野県 享保20年乙卯8月、立科山(古名高井山)で3千人余りの人足が大木を切ろうとしたところ、様々な怪異が起こった。谷底に大音声が響き、小屋の近くに大木が倒れる音がして、外に出ることもできなかった。しかし、夜が明けてみてみると、何もない。木を引き出すとき、声をだすと大雨が降り、声を出さずに静かにしていれば晴天になったという。
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ギッシャノネ 1981年 京都府 昭和17・8年頃の晩夏から初秋に3人で山に入り、下りて来る頃には少し暗くなってきた。しかしある所まで来ると辺りがポッと明るくなり、後からチンチンと牛車の音がしたがしばらく行くと辺りは真っ暗になり音も消えた。狸のいたずらだという。
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テングノサンオノギリ,タイボクニオノヲアテルオト,キノタオレルオト,ヤマノカイオン 1982年 新潟県 昭和10年代に村の男衆が何人かで山の奥へ炭焼きにいった。炭焼き小屋にとまっていると、遠くから大木に斧をあてる音がカーン、カーン、カーンと3斧聞こえてくる。やがて、ビリビリビリ、ドサーンと木の倒れる音がする。天狗の三斧きりというもので、音だけなのだという。音のするほうへ行って見ると、木は倒れていなかった。山の夜にはそういう山の怪音がするもんだという。
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コエ,カミサマ 1957年 山形県 昔のある日、シナ沢という金山で金掘りをしていると、外で呼ぶ声がしたので穴から出た。その途端に山が崩れて穴がふさがった。神様の声であったに違いないという。
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ヒトリモノノオトコ,ヤマ 1995年 島根県 ある独り者の男が、若い頃に畦を塗っていると、後の山からおいおいという声が聞こえた。知らん顔をしていると、上の山へ連れ上げられて、晩になっても戻ってこなかった。手分けして探したが見つからず、鉄砲を撃って戻った。すると、夜に男は見つかったが、はだしで雪袴はもぐらだらけになっていた。どこにいたか聞いても何もわからなかった。
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アズキトギ 1987年 長野県 昔,部落の真中を流れる川に「すくじの橋」という木の橋がかかっていた。秋の夕暮れの頃,ある村人が橋を渡ろうとすると橋の下から女のすすり泣くような声と,ショキショキと小豆をとぐような音が聞こえてくる。他にも聞いたという者があり,2,3人の若者が正体を見届けるため橋の傍の物陰に隠れることになった。夕暮れ時になると音がするので橋の下を捜したが何もいない。その後しばらく音はしなかったが,また耳にする者が増えだした。不思議なことに橋を渡ろうとすると泣声や音はやむのだが,通り抜けてしまうとまた始まる。振り返るとまた物音がやむ。いつの間にか「あずきとぎの女」と呼ぶようになった。
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キツネ 1938年 長野県 明治35、6年頃の9月中旬の夕方、大工のお上さんが用事の帰りに雪に降られた。山を越えようとするが、いつまでたっても里につけない。人が通ったのでたすけを請うが、素通りされる。気付いてあたりを見回すと、雪は降っていなかった。通り過ぎた人は狐の化けたものだった。
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