ゲタノバケモノ 1956年 宮城県 昔、ある長者が、下女下男をたくさん使い、贅沢な暮らしをしていた。一人娘のおご様(お嬢様)は立派な衣装を着て、下駄や雪駄の履物など一度履いたら捨て、それを拾うと怒られて、本当に勿体なかった。ある日不思議なことに、皆が寝静まると「カランコロン、カランコロン」と足音がしてお嬢様の部屋に行く。下女の1人が目を覚ましてそれを聞き、その下女は次の日から病気になってひまを貰うのだった。それが繰り返され、最後に12,3になる小さな下女1人きりになってしまい、お嬢様もだんだん青くなってくるので奥様も心配し、その奇妙な話を聞いて、薙刀を持って晩に見張りに立った。下女は鏡を懐に入れて行った。その夜中にやはり「カランコロン・・」と下駄の音がしたので奥様が薙刀で切ったが効果がない。下女が鏡でその方を写すと、下駄や雪駄がいっぱい揃って「カランコロン・・姫様クークー・・」と歌いながら踊っていたが、またも下女が鏡に写して光らせると化け物たちは消えてしまった。下女は小さいとき、母様から「鏡は正体をよく写すから粗末にすんな」と聞かせられていたのだ。奥様は今までのことを後悔し、お嬢様の顔色もよくなってなおった。
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バケネコ 1971年 福島県 猫は魔物だという。昔、殿さんのお后さんを食い殺して自分がそのお后に化けて、見てはいけないといって一間に籠っていた。そして鏡で見ると猫が映る。それをある女中が見て、その女中は殺されてしまった。化け猫の話である。
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チゾメノイシ 1937年 京都府 亀山藩主松平某が糸繰姫という側女に狂ったのを臣下がいさめると、殿は反省して「糸繰姫を下してしまえ」といった。それを臣下が「殺してしまえ」と聞き違えて、敷石の上で姫を斬った。今ではその石は3枚に割られて各地にあるという。
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ザシキワラシ 1974年 岩手県 明治初年の凶作の時に末の小さな娘に晴れ着を着せて裏山におぶって行き、藁打ち槌で頭をたたいて殺した。以来家に病人が出たり、座敷から毎夜奇妙な音がした。イタコによると殺した娘の祟りだという。家には座敷ワラシが出るといって使わない部屋があった。
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ウシノコクマイリ 1992年 茨城県 恨みを持った女が、真夜中に白装束で髪を振り乱して、頭にはろうそくを立て、口には剃刀をくわえながら、藁人形に五寸釘を打って呪いをかけるという。この様子を人に見られると願かけが失敗に終わるので、夜は外に出るなといわれていた。
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ネコ 1931年 鹿児島県 昔、狩が好きな武士がいた。その家には猫がいて、奥方によくなついていた。ある日、主人が山に狩に行くと、奥方の使いという女中がやってきて、家に帰るように告げた。女中がひとりできたことを怪しんだ主人は、化け物に違いないと思って女中を鉄砲で撃ってしまった。死体は見つからず、家に帰ると胸を撃たれた猫が血まみれで倒れていた。
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ワカミヤサマ 1983年 愛媛県 乱世の時代、ある殿様の奥方が山へ逃れたのを金めあての猟師が殺した。以来猟師の家は馬鹿や目の悪い者が出る家筋になったので、殺害場所に若宮様として祀った。月の一、十八、二八日にそこへ行くと怪我をする。
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テナシムスメ 2001年 青森県 昔、大阪の辺りに大金持ちがあったが、ここに来た後妻は娘を憎く思い、父が留守の間に家来たちに殺すように命じた。家来たちは娘を良く思っていたから殺すのに忍びなく、その両手を切って捨てるに留めた。娘が泣きながら京都の許婚のもとまで行ったところ、可哀想に思ったその若主人が、娘を妻とした。
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ヤマンバ 1981年 高知県 毎年みすぼらしい格好をして物乞いをする老婆がいた。ある年、宿泊を断り後ろから打ち殺すと、それから後に祟り出して、家は悪いことばかり続いた。太夫に見てもらうと、神楽を止めていることと先祖の祟りといわれて、再開した。
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アダチガハラノオニババ 1971年 福島県 安達ヶ原の鬼婆というのは昔、子どもを捨ててどこかの殿様に仕えていたが、殿様の子どもが病気で子どもの生血を飲ませれば治るといわれた。それで、忠義な人だったので通る人を泊めては殺していた。ある日、夫婦連れが泊まった。奥さんが産気づいて旦那さまが産婆さんを呼びに行った。その後に奥さんは殺されてしまった。そしたら、その殺した娘は自分の娘だった。多くの人を殺した罰で自分の娘を殺して、その後改心したという。
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イノシシ 1928年 愛知県 豊田という家に子供のときから世話になっている女がいた。同じ郡内の島原某という狩人の女房になった。ある時、狩った猪の臓腑を抜こうとして山刀を突き通すと猪は一声「痛や」と叫んだが、気にとめずに料理してしまった。そのとき女は臨月であった。その後、女は子供を産み落としたが、その子は胸から腹にかけて腹を裂いた猪と同様に一太刀割られた姿であったという。女はその後離婚して旧家へ戻り、奉公していたと言われている。
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ウエノヤマノマツ 1968年 愛媛県 上の山の松は笠松といい、昔、人骨が出たことがあった。誰かが入定したのだろうといわれている。この松を切ったら祟りがあり、切った本人だけでなく親類中が死んだという。また、その家では口の曲がった子が生まれるという。
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(オキクノタタリ) 1982年 群馬県 小幡の殿様が妙義で見初めた菊という女を侍女にし、寵愛したので他の侍女や奥方から恨みを買い、お菊が殿様に差し上げる御飯に針を入れられた。殿様は怒ってお菊を責め、お菊は宝積寺の山門まで逃げてかくまってくれと言ったが、寺は門を開けなかった。お菊は追手につかまり、蛇とムカデの入った樽に入れられ、宝積寺の池に投げ込まれて死んだ。お菊の母が「お菊が無実なら芽が出ろ」と池のほとりに炒りゴマをまいたら、芽が出た。お菊の祟りで宝積寺の山門は何度建てても焼けてしまう。
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キョボクノセイ,マショウ 1935年 大分県 孝徳天皇の白雉年間に草壁春里という長者がいた。広大な邸宅でこの世の浄土のような生活をしていた。長者は権勢に任せて串川の上流にある千条の枝を持つ栢の霊木を切り倒した。その巨木の霊に祟られたのか、一家ことごとく魔性のためとられていった。筑後の国草野の庄に草野太郎衛門という弓の名人がいて、狩の道すがら残された長者の末娘、玉姫に会い、事の仔細を聞いて妖怪退治の決心をした。魔性に1矢を放つと雷鳴とともに空はかき曇り大豪雨になって小川は忽ち氾濫した。
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テナシムスメ 2001年 青森県 昔、ある大金持ちのところに美しい一人娘がいたが、ここに心がけの悪い後妻が来て、家来に娘を殺すように命じた。家来は殺すに忍びなく、娘の両手を切ることとした。後に娘に子が出来た。この子供を背負ったまま娘が水を飲もうとしたとき、背中の子供が川へ落ちそうになった。その子を捕まえようと娘が精一杯両腕を伸ばすと、力の入った拍子に両の手が出てきた。
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フルムジナ 1934年 兵庫県 昔は人身御供があった。霜月の初めに、美しい娘の家に怪しい装束が立てられる。その娘を潔斎させ、白木の箱に入れ、川を渡って岩の上に置かなくてはならない。御供になった長者の娘を愛犬が追い、山中で激しく格闘した。翌日愛犬と狢が死んでおり、娘は無事だった。
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カイビョウコタババ 1987年 長野県 昔,ある六部が根津村の長命寺大日堂にお篭りしていると,子猫が沢山集まってきてうるさく鳴く。よく聞くと「国分寺の小太ばば来なけりゃ踊りにゃならん」といっており,大きい怪猫が嵐と共に入ってきて子猫達と共に踊り狂った。六部が仕込杖で怪猫を刺すと,血を滴らせて逃げていった。次の日,「小太ばば」が門前の小太郎の家の老婆であることを知り,訪ねてみると,老婆は昨日足を痛めて寝ているという。六部がお薬師様に祈願して法力を身につけ小太郎の家に乗り込むと,老婆は怪猫の本性を現して尾野山に逃げ込んだ。家を探すと,縁の下から老女の白骨が現れた。小太郎は薬師様に願をかけ,六部の助けで尾野山に飛びつけて怪猫を仕留めた。今も国分寺の裏に六部の石塔があり,小太郎屋敷という地名も残っている。
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ナマクビ,オニ 1937年 京都府 1人の武士が歩いていると、棒に女の生首が刺さっていた。一目散に逃げると灯のともった家があったので止めてくれるように頼むと、その家の男に爛々たる目で睨まれたので、また逃げ出した。村人とともに戻ってみると、悪者に殺された女の首だった。そこを生首谷と言うようになった。また、昔、鬼が人間の生首を引き抜いて捨てた所ともいう。
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カタウデ 1939年 香川県 夜になると窓から大きな片腕を出して「これを見ろ」と言う。そのためか、その家の女が2、3人死んだ。後に別の女が刀でその腕を切ると、手応えはあったが何も落ちてはいなかった。以後そのようなことは起きなくなった。
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オニ 1970年 鳥取県 昔、鬼が出て人を食ったりして暴れていた。鬼が出る雪の晩、若い娘が宿を求めてきたので泊めてやり、鬼の話をしたところ、娘はヒイラギの葉を戸口に打ち付けて豆を撒いた。すると鬼は逃げていった。翌朝、娘はいなくなっていた。神様であったという。
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