マツ,カイブツ 1922年 岩手県 上閉伊郡栗橋村字古里に大きな松の木があり、日光を遮っていた。耕作物の邪魔になるので伐り倒そうとしたが、次の日になると元に戻っていて伐ることができなかった。ある日夢に一人の翁が現れ、木の伐屑を毎夕方に焼き棄てれば成就すると告げた。言うとおりにすると木は倒れ、それを用いて船を造った。しかし、不思議なことに船は一夜のうちに姿を消してしまった。あるとき、漁夫が橋野川の川上で得体の知れないものを見つけ、大权で突き刺した。一度帰り、次の日再び現場に行くと何もいなかった。探している内に漁夫は狂い、あたりは風雨となり大洪水が起こった。一夜たつと河口に突如として奇岩が現れた。人々は、漁夫の突き刺した怪物の化身だと言い囃した。
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テング 1968年 埼玉県 腕のいい川狩り人夫がいた。ある大仕事をひかえた日、天狗様にお神酒を供えず、悪口を言っていた。仕事中、にわかに黒雲が出て雷鳴がとどろき、山程もある岩が人夫の上に飛んできて、材木は岩の下に埋められ、若者はいなくなった。天狗の仕返しといわれた。
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ハチマン,カイジン 1977年 静岡県 遠州の日坂に八幡の祠がある。昔この明神の美しい娘を海神が妻にしようとしたが、明神はそれを許さなかった。怒った海神は大鯨を遣わして娘をとろうとしたので、明神は碁盤で打ち殺したところ、鯨は山にかわったという。海神はさらにむくりこくりを語らい軍を起こすも、明神はそれを戦って退散させた。海神はさらに明神の御方なる人が海辺に来たら仇なそうと考えた。これより現地の民は潮を焼く所がなくなったという。
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イチョウ,バツボク 1939年 大阪府 大火の際に水を吐いて、周辺民家への延焼を防いだ銀杏があった。ところが、実を結ばないために、木の持ち主が銀杏を切ろうとした。すると、夢の中に現れた武士が、実を結ぶ代わりに、銀杏を切るなと頼む。人夫も高熱で倒れたため、主は切る事を断念した。
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ダイジャ 1939年 新潟県 寺の釣鐘の為の木を、山から鎧潟を通って船に載せてきた。途中、その木が落ちて大蛇となり、潟の上に首を出して押し付けの寺に上がろうと言って沈んでいったという。
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タラノロウボク,ムジナ 1989年 新潟県 タラの老木は芽が出ないので、男に化けて女になった狢と共に伊勢参りに行った。帰りに船から下りるとき正体がばれてしまった。その後、タラの木は芽吹いたが、この木を切ろうとすると雷が鳴り響いた。
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レイボク 1975年 山形県 聖天宮の杉の大木を伐りだそうとすると斧の切り口から血が噴出した。続けると真中からぽっきり折れたので根元のほうで大きな船を作って川を下した。すると船は突然向きを変え川を上り始め、やがて静かに沈んだ。旱魃の時はこの舟を棹でつつくと雨が降る。
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ダイジャ 1956年 東京都 箱根の漁師が、大蛇に娘をやる約束をしてしまった。末娘が行くことにすると、日頃信心していた三島明神が三宅島に来いと言う。火土寄神が剣を作り、差出明神が退治した。
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ミズウミノヌシ,ダイジャ 1928年 東京都 昔のある日、漁夫は船に一杯の魚と引き換えに、湖の主の大蛇に三女を嫁にやることになった。蛇が迎えに来たとき、娘は鳩になって富士山の山頂に逃げた。そこにいた事代主命は娘を連れて大島から三宅島に逃げた。そこにわなを仕掛けて大蛇を酔わせ、火之迦土に作らせた霊剣で、差出命が大蛇を斬り殺した。蛇は3つに斬られ、尾は大島に、頭は八丈島に飛んでいった。だからそれらの島では蛇が多いのだという。
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リュウ 1977年 熊本県 平家の水軍が軍船を造ったが、全く動かず進水できなかった。そこに近郷で評判の美女、油屋のお万が現れ、船台に油を注ぐと船は進水し、辺りは大嵐となった。嵐が止むと軍船もお万も消えた。お万の両親が、夢に現れたお万の言葉通りに3本の青竹を入江に浮かべると、水中から竜となったお万が現れ、天に昇った。
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カニ,ヘビ 1990年 石川県 輪島の大百姓が旱魃のとき、干上がった堤を見て「この堤に水を張ってくれる者がいたら婿にしてやるのに」といっていると、晩に大雨が降って堤が水で一杯になった。その後、自分が水を張ったという侍が婿にしてくれといってきた。その家の女中が話を聞いていて、いつも残り飯をやっていた蟹に恩返しをしてくれというと、夢に蟹がでてきて、対策を教えてくれた。侍の正体は蛇で、家に入ってきたところを、蟹たちに七つに切られた。その蛇の骨が七つ島になったという。
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ヘキレキボク 1976年 広島県 推古天皇の36年に、安芸国で昔より祟るといわれている古木を切ろうとした。雷雨が始まったので、切れと命令した人が祟るなら私を祟れと言った。すると雷雨が止み、木を切ることができた。
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キ 1941年 愛媛県 昔、庄屋の家を建てるために、村人が山の大木を切ろうとしたが、一日で切りきれなかった。そして、翌日、その木は無傷だった。かろうじて切り終わったら、今度は重くて動かせなかったが、ヒマヒヲンナが来てくれて簡単に引けた。しかし、この木で建たれた家は直ぐ燃えてしまい焼けた。この木は北向きの神山のものだったという。
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ヨウマ,キジムナー 1969年 沖縄県 鮫殿という男が妖魔と友達になり漁をしたが、やがて妖魔を恐れて、住処の桑樹を焼いて追い払った。数年後、友人に木を焼いたことをもらすと、友人は妖魔に変じ、小刀で指の間を刺して男を殺した。
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キツネ 1982年 宮城県 魚を馬につけて売りに行く人が、人間に化けた狐に魚をよく取られたので、次に声をかけられたときにはきっちり縛りつけて殺そうとした。それを見た及川氏の先祖が助けてやれと意見し、狐は助かった。その夜、狐が及川家の平貝の沢という田圃で唄を歌いながら田植えをし、その田圃はその年豊作になった。
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ヤマンバ 1936年 牛方が塩鯖を運んでいるときに山姥に襲われ、鯖も牛も食われてしまう。牛方は木に登って隠れていたが、その姿が沼に映っていた。その姿めがけ、山姥は沼夜涛に飛び込んだので、牛方はその間に逃げて、一軒家に隠れた。そこは山姥の家で、牛方は山姥の餅や甘酒を飲んでしまったが、山姥はそれを火の神の仕業と思い、唐櫃の中で寝た。山姥は牛飼いが錐で蓋に穴をあける音を聞いて「明日は天気だけで、きりきり虫が鳴かあや」といいながら殺された。
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ダイジャ,オオスギ 1937年 静岡県 逢瀬に出かける大蛇に呑まれた絹商人の娘2人が弓矢で仇を討った。その大蛇を葬った記念の植えた2本の杉を船の帆柱に使うと、夜に「伊豆へ行こう、伊豆へ行こう」という声が聞えたという。
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ダイジャ,キヨヒメ 1935年 和歌山県 安珍という美男の修験者を、淸姫という娘が恋い慕って、女は大蛇と化し、逃げる安珍を追いかけ、安珍が道成寺の鐘の中に隠れると、大蛇は口から火を吐いて焼き殺してしまった。
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ダイジャ,カマ 1981年 長野県 作男が丸山の森でもや刈りをしていると、睡魔に襲われ、眠ってしまった。目を覚ますと大蛇が男を呑もうとしていた。そのとき手にしていた鎌がひとりでに大蛇に切りかかり、大蛇は消えうせた。その鎌を祀ったのが山の神様という祠。
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オオミズチ 1976年 岡山県 仁徳天皇の67年、川嶋河に大虬が現れ、近付く人は皆毒にあたって死んだ。そこで力の強い県守が、3つの瓢箪を河に投げ入れ、この瓢箪が沈んだら汝を殺さないが、沈まなかったら殺すと言った。虬は鹿に化して瓢箪を沈めようとしたができなかった。県守は剣を抜いて水に入り虬を斬った。淵底に潜んでいた虬も悉く斬ったら、河の水がたちまち変じた。故にその水を号して県守の淵という。
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