ヨシボッコ 1964年 福島県 よしという男は、町へ使いに出たと思ったが翌朝見るとちゃんといる。よほど足がはやかったとみえる。「米の飯がくいたけりゃうわぐろ掘れ」と言われ、一箇所だけを掘って大穴をつくったことがある。なわをなえといえば、たちまち始末におえないほどつくる。
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ヤマンバ 1992年 宮崎県 琴塚という山の横穴には、昔山姥が住んでいた。山姥は頼めば膳椀を貸してくれたが、決して顔を見せようとせず、話すときは後ろを向いていた。里の荒くれが無理やり顔を見ようと山姥につかみかかったら、山姥は怒って雷の音をさせ、姿を消した。そのご、この穴から琴の音がもれ聞こえるようになったので、琴塚という。
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オギヤアナキ 1962年 徳島県 戦陣に臨む父親が穴の中に赤子を埋めた。腹が減る頃になると鳴き声が聞こえ、土の上に食い物を載せてやると止む。そこはおぎゃあ泣きと呼ばれて今でも人は立ち寄らず、昼でも暗い。
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エンコ 1980年 広島県 ある人が田の石垣を作っているとエンコが現れ相撲を挑んできた。負けたら肛門を抜かれると思い必死に相撲をしたが勝負が付かない。腹が減ったので休戦して弁当の食べているとおかずの筍を竹だと思ったのか、あんなもの食べる人間には勝てないといって逃げた。
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タヌキ,ハッチョウノダダボウ 1990年 福島県 八町の宮にダダ坊という化け物がいて子供を食うので、盲目の中井坊に退治を頼んだ。中井坊はすり鉢をかぶり山鍬と才槌を持ってお宮に行き、化け物に殴りっこをしようと持ちかけてすり鉢を殴らせ、自分は鍬と槌で叩いた。化け物は血を流して逃げていった。翌朝村人と一緒に追うと、お宮の欅の洞穴に何十年も経った毛の薄くなった大きな古狸がいたので、殺して狸汁にした。化け物も出なくなった。
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オイヌサマ 1932年 愛知県 村に迎えた御犬様が落とし穴に落ちた。村の男が、藤蔓で作ったもっこで助けようとしたところ、鋭い牙で蔓を噛み切った。恐ろしくなった村人は、梯子をかけてそのまま立ち去った。御犬様は抜け出して助かったが、後日再び穴に落ちて、鉄砲で射殺された。
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ワライオンナ 1943年 高知県 安芸郡和食村で、深山に入った山師が夕方、小屋で尺八を吹いていると、綺麗な女の人が尺八を聞かせてほしいと小屋にきた。女は笑い女と名乗ったので、山師がそれなら笑いを聞かせてくれと頼むと、笑い声は次第に大きくなり、山から谷に響いた。山師が怒って大鋸や手斧を投げたが、女はそれをバリバリと食べた。どうすることもできないと思ったら、鶏の時の声が響き、笑い女は消えた。鶏の声は山師の持っていたお守りが出したものだった。吾川郡にも同様なものがある。
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イタチ 1974年 京都府 古い石垣の根方の穴に年老いたいたちが住んでいる。そこを一人で通るとき、穴の奥から「酒ごんご、油ごんご」と声がかかり、聞いた者がそれを届けないとよくないことがおきた。
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クマイムシロ 1956年 宮城県 昔ここにある武士の屋敷があり,そこの姑が嫁を憎みいつも意地悪をしていた。ある夏,嫁に麦を搗かせて十枚の筵に乾させ,密かに一枚を隠して嫁に罪を着せ,筵一枚分の麦を盗んで他に売ったに違いないと日夜責め立てたので,嫁は口惜しさに井戸に身を投げた。その後毎夜のように幽霊となって現れ,一枚,二枚,三枚・・・九枚と凄惨な声で数えたので次第にその辺りを通る人はいなくなり,その武士の家も病死や発狂人を出して絶家してしまった。その後明治末頃まで,雨が降ってもその屋敷後の地面の筵九枚分の跡だけは濡れないと言って子供達が見物にいったものである。
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ヘイシロウムシ 1923年 山梨県 富豪の蔵に穴をあけて盗人が入った。その穴が小さいので村人が不審に思っていると、平四郎という男が穴の入り方を実演してみせたので、逆に疑われ極刑に処された。すると亡魂が虫となり、年々村の稲作に害を与えるようになった。
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ビジョ 1992年 宮崎県 穴谷の鍾乳洞には昔一人の美女が住んでいた。美女は頼めば膳椀を貸してくれり蜜柑や柿をくれたりしたが、決して顔を見せようとせず、話すときは後ろを向いていた。里の青年が無理やり顔を見ようとつかみかかったら、美女は洞窟の奥に姿を消し、再び現れることは無かった。
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キツネ 1989年 長野県 越後獅子を演じる人が岩の沢を登ってきたところ、きつねが昼寝をしていたので石を投げた。しばらく行くと立派な家があり、獅子舞をした。家の娘がご馳走をしてくれ、風呂に入った。冷たくなって見ると、家も娘も消えてしまい、広い麦畑の中だった。ご馳走だと思った者は馬糞だった。
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キツネ,キツネビ 1939年 秋田県 火葬場の灰を肥やしにするために穴を掘って貯えおいていたら、夜な夜な火の玉が飛び出すと言って怖れたが、間もなく噂も止んだ。
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イッチョメ,ヒトツメ 1936年 熊本県 甘藷を掘って馬に積んで帰る途中いっちょ目に襲われた。男が小屋に隠れ、寝ているいっちょ目に小便をかけると、いっちょ目は夕立が降ってきたといい、屁をひると雷が鳴っているといった。最後には小屋に火をつけられていっちょ目は焼き殺される。
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セリザワノサラヤシキ 1956年 宮城県 昔,芹沢という者が武芸の腕によって禄とこの土地を賜った。それから三代後の当主の時の話。ある正月,同家の女中が主人秘蔵の錦手の皿十枚を箱に納める際,一枚を落とし毀してしまった。しばらく隠していたが遂に露見し,一刀のもとに斬り殺された。その後毎夜のように同家の水屋に女中が現れ,「一枚,二枚,三枚・・・九枚・・・おお・・・」と恨めしげに訴える。主人は自らの仕打を悔い,女中の霊を慰めるために石地蔵を刻み,自分の山の頂に建てた。また不吉の刀を地中に埋め,小祠を建てて祀ってやった。以後女中の声も聞こえなくなったという。今でもこの山を地蔵山と呼ぶ。なお旧芹沢家には別人が住んでいるが,その後は何の変事も起こらないという。
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ニイヤミョウジン,ダイジャ 1935年 群馬県 昔、利根郡にある山麓の長者に、三人の美形の娘がいた。或る日、田舎には珍しい美青年がやって来て、娘をほしいという。断ったが夕刻になると訪れる。不審に思った長者が氏神の新屋明神に祈った。翌夕、明神のお告げに従って青年に笄を渡し、鶏が鳴かない内にこれで溝を掘れという。青年は難なく掘って最後の一掘り直前に、新屋明神のご加護により鶏が鳴いた。青年は大蛇で、逃げた後に石が残った。
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コギツネトショウベエ 1956年 宮城県 昔、あるところに正兵衛という鉄砲ぶち(打ち)がいて、つる橋の上でつるにからまって動けなくなっている小狐を助けた。正兵衛が家に帰って菜っぱ汁をたいていると、鍋がさっぱり煮立たないので開けてみると小判がいっぱい入っていた。そこへ来て、わけを正兵衛から聞いた慾兵衛は、「その狐、腹の中いっぱい小判だべ」と出かけ、小狐を打ち、腹を割くと小判がいっぱい出てきた。しかし家に帰って見るとそれはすべて馬の糞だった。正兵衛は、今回の件で殺生は悪いことだと後悔して百姓となったが、その田も畠も上作で、だんだん金持ちになった。一方慾兵衛はその後猟もなくなって貧乏になり、夜逃げしたという。
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シラガノロウバ,ヤマンバ 1974年 高知県 麦が次々と生えてくるので、不気味に思い、麦畑を焼いた。すると畑から老婆が出てきて、山姥の林に逃げていった。以来、家が衰退していった。
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オオカミ 1991年 長野県 夜に掘り割りを通ると、上を狼が飛ぶ。庄屋はどうしても夜通らなくてはいけなくなったので、傘に刀を差して渡った。通る時、何か刀が引っ張られたが、そのまま通り過ぎた。翌日見たら、狼が腹を切り裂かれて死んでいた。
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タヌキ 1929年 長崎県 小浜町に、人を化かす狸がいた。退治しようと狸の穴をいぶした若者は、その夜に喉を締め付けられ、さらに外に出ようとすると急に体が大きくなった。若者は用便も足せず、戸口からも出られず、苦しんだ。翌日、このことを話すと、狸にあだ討ちをされたのだとわかり、謝りに行くと、ようやく眠れるようになった。
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