アワビ 1928年 千葉県 岸和田の海岸には大きな鰒魚が住んでいて、大傘を開いたほどの大きさであったという。誤ってその殻に触れると海が荒れると信じられている。ひとりの乙女が船人である恋人に会うために鰒魚を怒らせようとしたが、度を越してしまい、乙女の船は転覆し、これを助けにいった男も海の藻屑となった。
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オオアワビ 1964年 千葉県 海岸に住む大鰒に触れると海が荒れる。海が荒れている時に、美しい海女が男と会っていた。海が荒れていると男と会えると思った女は、鰒に石を投げ続けた。男の乗った船が心配であった女の船も沈没し、救助しようとした男も溺死した。
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ウミナリ 1933年 台湾 1850年ごろ、大安に寄港した船に若者が雇い入れられた。土地の人々は沖遠く船出することを嫌忌しており、若者を止めたが、若者は船に乗り込んだ。若者は海に出ると日増しに恐怖に襲われ、得体の知れない病気に罹り、ついに死んでしまった。その後、若者の望みどおり死体は大安に帰された。若者を待っていた恋人の女は若者の死をしって狂気となり、海に身を投げた。その波紋が沖に広がっていったとき、沖から恐ろしい海鳴が聞こえてくるようになったという。
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クジラ,オンナノカオ 1933年 佐賀県 鯨がある漁師の夢枕に立ち、明日は大宝山参りでこの沖を通るから、どうか自分を捕らないでくれと頼んだにもかかわらず漁師はその鯨を網にかけた。すると物凄い雲が現れ、その雲の中で女の顔が笑った。とたんに暴風雨となり、鯨組全員は海の藻屑と化した。
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ゴンダラ 2001年 青森県 ある漁村に孫助という若者がいた。ある日、大きなごんだらが網にかかると、孫助はこれにひきずられて海中へ引き込まれて行方不明となってしまったが、暫くして海を泳いで帰ってきた。すると、1年程経ったある日から、晩に女が訪ねて来るようになった。だが、そうなってからというもの、孫助は日に日にやつれていってしまう。和尚に相談してこの女に毒針を刺してみたところ、その正体は大きなごんだらであった。
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ダイジャ 1967年 福島県 川が二股に分かれているうちの、低いほうの川原に家が一軒あり、どんな洪水にも水は家に上がらないが、昔は水が出るたび流されていた。母親は嘆息し、家が流されずに済むなら、3人娘の1人を淵の主にやってもよいとつぶやいた。その後、毎日のように若侍が尋ねてくるようになり、水難はまぬがれるようにするから娘を欲しいといった。それから、娘が時々いなくなるので不審に思い、ある時娘をつけてみると、淵の傍に大蛇が巻いている中に座っていた。母親は驚き帰ったが、若侍の訪問は止まないので娘をくれてやった。幾日か後娘たちが泊まりに来た夜、私の姿を見ないでくれという。恐る恐る見てみると2匹の蛇がいたので肝を潰した。娘は姿を見られたことを悲しみ、再びお目にかかれないと、形見に片方の下駄と鱗を一片残して去った。
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ヘビ,カニ 1976年 京都府 昔、綺田に美しい女がいた。ある時、村人が蟹を食べようと沢山取っていたのを、女は魚と交換して助けてやった。次の日、女の父が蛇が蟇を呑んでいるところを見つけ、蟇を逃がしたら娘をやると言った。蛇はすぐに蟇を放して去った。その夜、どこからか男が現れ、昼の約束の通り来たという。まだ娘に話していないというと去った。娘はそのことを聞いて仏前で読経をはじめた。蛇が現れ閨に入った。村人が戸を開いて中を見ると、女は無事で、蛇が数万の蟹に挟まれて死んでいた。村人はその所に寺を建立し蟹満寺と号した。
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タコ 2002年 山口県 昔、甚平という漁師が住んでいた。魚を捕ることが巧みで近隣の者は皆知っていた。ある日甚平が岩の近くで魚釣りをしていると、急に船が傾いた。見れば大きな蛸の足が船縁を掴んでいた。甚平はその足を包丁で切って持って帰った。その味を覚えた甚平が翌日も岩へ行ったところ、その日も蛸が現れた。こうした日が5日続き、8本の足が3本にまで減った日に、甚平はこの蛸を捕ってやろうと包丁の代わりに縄を持っていった。それきり甚平は帰らず、主のいない船が夕方に浦へ流れ着いた。村人達はきっと蛸に食われたのだろうと噂した。それ以来その岩を甚平岩と呼ぶようになった。
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ヒメコイワ 1956年 宮城県 大平館、城主千葉正右衛門の美しい一人娘の姫のもとへ若殿風の美男が通う。手土産が常に魚なので乳母があやしみ、ある夜、男の袴の裾に針を刺すと、忽ち天候が急変。海は荒れ、男は姿を消して来なくなる。姫は思慕のあまり館の下の海中にある岩の見える岸で男を待ったがむなしく、遂に入水して死す。その頃、気仙沼の南、松岩の海岸に打ち上げられた大鱈の死体に針が刺さっており、若殿はこの大鱈だったと判明。姫が男を待ちこがれた岩を姫子岩と称した。それ以来、毎年初鱈の大群が沖から姫子岩を目指してくるようになり、これを鱈の姫子岩参りという。
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ヤマンバ 1936年 青森県 宝之助という男が塩鮭と鱈を牛で運んでいると山姥に出会って、荷物も牛も食べられてしまう。山姥から逃げた男は逃げ込んだ家にいた25、6歳の女の言うとおりしだみを噛んでいた。その音を聞いた山姥はこがにはいって蓋をしてもらって寝た。蓋に重石をして熱湯を注ぎ込んで山姥を殺し、宝之助と女は夫婦になって幸せに暮らしたという。
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トモカヅキ 1934年 三重県 海女が海に潜っていくと、もう1人の海女がおり、鮑をくれてよこしたり、暗い中へ誘い込もうとすることがある。もし、本物の海女だと信じて鮑を貰ったり誘い込まれたりすると、潜水時間がのびて窒息死してしまう。これをともかづきと言う。
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オオダコ 2001年 愛知県 昔須佐におりんという老婆が漁をして暮らしていた。ある日おりんが漁に出ると大きなたこが船にへばりつき、足を一本差し込んで捕えようとした。おりんはたこと戦い足1本を切り取った。次の日もその次の日も同じことが起こったが、8日目に最後の足を切り取ろうとしたときにその足に巻き込まれて海の中に引きずりこまれ、たこの餌食になった。
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タケベラタロウ 1956年 宮城県 昔、巡礼の和尚さんがある村に入ると、1人の娘を真ん中にして家内中泣いている家があった。毎年秋の稔りのとき、向こうの山の神様に若い娘を人身御供として供えねば、田も畠も荒らされる、今年はこの家の番だという。和尚さんがその山の社に隠れていると、夜になって大勢の者がやってくる音がして「あのことこのこと聞かせんな。竹箆太郎に聞かせんな。近江の国の長浜の、竹箆太郎に聞かせんな。」と歌う。和尚さんは近江の国へ捜しに行くと、竹箆太郎とは小牛のようなブチ犬だった。和尚さんは竹箆太郎を連れて帰ってきて娘の身代りに長持の中へ入り、やってきた者たちと対決した。翌朝村人たちが行ってみると多くの猿が死んでおり、針金のような毛をした一番大きな猿が竹箆太郎にのどを深く噛み切られて死んでいた。それからはみんな安心して暮らすことが出来た。
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ダイジャ 1975年 山形県 昔狩川に千貫長者がいた。ある夜立派な若者が訪れ長者の娘と恋に落ちた。娘は身篭ったが産気づかない。手を尽くしたが効き目はなかった。ある日六部が来て、姫を救うには邸内の松にある鳶の卵を飲ませよという。長者は若者を松に登らせたが、若者は鳶にさらわれ地面に叩きつけられた。六部は「私は以前あなたに助けられた蛙で、婿になりすましていた若者は私を飲みこもうとした大蛇で、沼の主である。蛇は恨みを晴らそうと婿になった」という。見ると婿は大蛇であった。産気づいた娘が生んだのは無数の蛇であった。娘は死に、六部は姿を消した。
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ヘビ 1929年 東京都 神津島の東側海中に祗苗島いう海草貝類の豊富な小島があり、村の女達はよく採りに出かけていた。ある日漁の最中、急に天候が悪くなり皆急いで帰村した。だがひとり残された女がおり助けを求めて叫び続け死んでしまった。暴風が去り若衆が助けに行ったが、既に死体となりその髪の毛一本一本が蛇と化して居た。
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ヌマノヌシ 1975年 山形県 若者の笛に魅せられた沼の主と名乗る美少女をふりきって京に出た若者が、数年後に最上川を下っていると、舟が止まって動かない。客が手ぬぐいや笠を川に流すと、若者の笠だけが川底に引き入れられた。若者は娘のしわざと悟り、自ら水に入り沼の方に消えた。
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ゴンダラ 1956年 宮城県 昔,折立の町外れ(志津川街道)の小川近くの崖上(現共葬墓地)に長者屋敷があった。この屋敷の娘に,いつの頃からか若衆が通ってくるようになった。娘がだんだんやつれていくので,乳母が問いただしてそのことが判明した。化生の者かも知れないということで若衆の裾に糸をつけた針を留めさせ,翌朝家人が調べると血痕が一筋家から小川まで続いていた。海の川口が血で染まっており,巨大な鱈が死んでいた。解体して馬に積んだら五駄分もあったので,以後その地を「五駄鱈(ゴンダラ)」と呼ぶようになった。娘は同じ場所に入水して後を追った。その小川を思い川または毒川と呼ぶようになった。その後,鱈の魚群が小川を遡行しないうちは近海で鱈漁を行わず,またこの折立海辺で一番早く鱈が獲れたという。一説では,若衆が死んだのは長者の家の奉公人達が打ち殺したためと言われる。
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クモ,ヤマンバ 1952年 島根県 夜釣りに行くと海岸から鯖をせびる老婆がいた。毎晩なので「やらぬ」と言うと船を沈めると言い返される。ある夜、老婆の跡をつけ、風呂桶で寝たところに蓋をして大石を乗せ火を焚いて焼き殺した。その後蓋を開けてみると、やはり劫を経たヤマンバだった。
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ジュンレイムスメ,ヘビ 1961年 山梨県 昔、釜無側の下流の浅原村に3人暮らしの親子がいた。ある年の夏に、1人の巡礼娘が雨宿りを乞い、そのまま逗留した。息子の浅吉とその娘は夫婦となるが、2、3年過ぎたある夜、妻が行燈で障子にうつるが、それは人間の女の姿ではなかった。1家は怖くなり、暇をやると、嫁も承諾し、暴風雨の日に釜の蓋を貰い受けて、釜無川の濁流の中に投げ入れ、その上にとび乗り、蛇身と変じて姿を消してしまった。すると俄かに洪水は引いて水害は免れ、その後も水害は起こらなかった。沿岸の人たちは恐れをなしてしばらく釜を使わなかったので釜無川という。
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オニトムスメ 1956年 宮城県 2人の姉妹が、天気の良い日に栗拾いに山の奥まで行った。そのうち夜になって道に迷い困っていると、柴を抱えた同じ年頃の娘が来たので、その娘の家に泊めてもらった。そこは山の崖下にある粗末な掘っ立て小屋だったが、「自分は鬼にさらわれてここにいる。鬼が来たらどんな目にあうかわからないから、長持に隠れていろ」と娘が言う。鬼が帰って「人くせえ」というが娘がなんとかごまかし、鬼は「誰か来たら逃がすな」と言い残して去る。逃げる機会をさぐっていた娘も一緒に、一鞭あてると千里走る車を奪って逃げる。帰ってきた鬼は残っていたもう一つの車に乗って追いかける。海まで来て鬼は一息に海の水を飲み、娘たちの車が鬼の目の前に来たとき、娘たちはしかたがなくなって、3人で腰巻も何もかもひきあげて尻を丸出しにしてぴたぴたと叩いた。すると鬼が大笑いし、その拍子に水は鬼の口から出て、娘たちの車は無事に対岸へ着いたという。
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