オオオトコ 1954年 鹿児島県 昔サイヘエが松の傍に1軒の家があった。毎年師走29日晩にドテラを着た見慣れぬ大男が現れ、横座に座り込む。それを聞きつけて、大男を討ち取ろうとした者がいた。灰神楽で驚かせ、抜き打ちで切って捨てたのだが、家の夫婦はたちまち盲になり、やがて家は絶えた。
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(ミズガノメナイタタリ) 1977年 和歌山県 当屋の家で祭のために作っていた一夜酒を、ギョウネンさんの所にある家を守っていた人が神様に捧げる前に飲んで逃げた。水呑峠で追いつかれて岡弾正の家人に殺された。以来、岡家の者は水呑峠で水を飲めないという。
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カワウソ,オオニュウドウ 1975年 山形県 養蚕の盛んな頃、夕方に桑摘み衆が板の間をペタペタやって来る一尺足らずのザンギリ頭のかわうその化け物を見た。また、かわうそは化けるとき大入道になるので、大入道を見るとノドを見せないようにして足を払えばよいといわれる。
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テングノカミ 1995年 島根県 高尻の奥の方に幾蔵という百姓がいた。ある夜、天狗の神が現れ、金の矛と金の御幣を立ててお神酒とお灯明を供えれば猪が出ないようにしてやると言った。そのようにすると猪は出なくなった。幾蔵を頼ってくる人の病気も治り、人々の信心を集めた幾蔵は物持ちになった。それを羨む村の者たちは、神さまを幾蔵から取り上げたが、拝んでも効果は上がらなかった。
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ヒトツメコゾウ 1962年 山梨県 昔、さかね沢というところの山小屋に太郎助という若い衆が大勢の村の人たちと木こりをして寝泊りしていた。その頃は12月13日には仕事を休んで家に帰ることになっていたが、太郎助だけが残る。夜中に山小屋の外の音で目が覚め、入口を見ると一つ目小僧がじっと太郎助を見ていた。一つ目小僧が「今夜の酒のさかなは何だあ」とどなるが、「お前のまなこ玉だあ」とどなり返すと一つ目小僧は逃げ出した。太郎助は夜が明けると家に帰ったが、それが元で死んでしまった。それから沓沢では鰯をもみやからたちの枝に刺して門口におくようになった。それは小僧がのぞいた時にその目を刺すからだという。
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クビナシウマ,ヤギョウノカミ 1984年 愛媛県 上須戒村と高山村の境にある小笹ヶ城から多田村の小笹ヶ城までの道を、毎月27日の子の刻に烏帽子、狩衣を着した貴人が、頭のない白馬に乗り、舎人を一人連れて通る。これを人々は夜行の神と呼び、出会うと熱病を受け死ぬと伝えるため、27日の夜はその道を通る者はいなかった。しかし、ある時高山村の百姓がこれに出会い、道の下の岸陰に隠れていると、夜行の神が足を止めて「この道の下に人がいる」と言ったが、舎人が「この者は下人です」と告げたのでそのまま通り過ぎ、命拾いをした。
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キツネ 1990年 長野県 野菜を作る畑にシシが出るので、それを追うために小屋を建てて毎晩泊まっていた。あるじい様が小屋で寝ていると、「寝たか」と言ってばあ様が鼻の辺りに手をかざした。不審に思ったじい様が朝にきたばあ様に尋ねても知らないと言うので、きつねが化けて出たのだと短刀を持って寝ていた。するとまたばあ様が来て手をかざしたので、小柄で突いた。すると悲鳴を上げてきつねの姿で飛び出したので、朝に血の跡をつけていくときつねが死んでいた。
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ナマクビ,オニ 1937年 京都府 1人の武士が歩いていると、棒に女の生首が刺さっていた。一目散に逃げると灯のともった家があったので止めてくれるように頼むと、その家の男に爛々たる目で睨まれたので、また逃げ出した。村人とともに戻ってみると、悪者に殺された女の首だった。そこを生首谷と言うようになった。また、昔、鬼が人間の生首を引き抜いて捨てた所ともいう。
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タラ 1982年 宮城県 夜、女のもとに体の冷たい男が通ってきて正体がわからないので、集落の長が針を相手の着物のツマに刺しておくように言った。そのとおりにすると翌朝、馬で5駄もある大きな鱈が死んでいた。それでその集落をゴンダワラと呼ぶ。
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ナンガクボウ,ナンガクバナ 1931年 滋賀県 昔、南覚坊という行者がきて、真言秘密の不思議な術を使ったため、首をはねられた。その年、村には病気が流行し、飢饉にもなったため、南覚坊の祟りといわれた。法蔵寺で南覚坊を手厚く弔ったが、その翌年から、首を切った下役の家の甘薯芋には朝顔のような花が咲くようになり、その後もこの家が富むことは無かったという。村人はその花を南覚花と呼び、不吉なものとしている。
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テング,ハビ,マムシ 1977年 和歌山県 もんどうさんという信心深い人が行方不明になったので、村の人たちは鉦や太鼓を鳴らして「返せ」と呼びながら歩いた。3日後に柿の木の上からもんどうさんが落ちてきた。天狗に連れて行かれてトヤグラ(岩山)に行っていたという。トヤグラの主はまむし(はび)で、天狗が「怖いなら袂に入っていろ」というのでのぞいてみると、天狗やはびがたくさんいたという。
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カグハナ 1989年 高知県 土佐では昔、聞鼻という悪鬼が年越の夜出て家々を廻り、人を奪い去って食ったという。
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オオムジナ 1956年 宮城県 文化年間、加美郡宮崎村地方に、福原縫殿という狩の達人がいた。秘蔵のオキ笛を持ってあるとき山奥に入った。夕方になって獣寄せの笛を吹いていると、朝別れたはずの妻が大木に寄りかかっているのが見え、不審に思い仕留めた。しかししとめたあとも妻の姿のままであったので不安になって家に帰ると妻は無事だった。下僕に探しにいかせると、それは年を経た大狢であり、その物凄い形相に村人は皆驚いたという。
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カラスヘビ 1915年 愛知県 ある者が、追ってきた烏蛇の首を打ち落として殺した。その年の秋雨の降る日、笈を着て田仕事をしていると、蛇の頭が飛んできて笈の首の部分に咬み付いた。
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ヤマオトコ 1989年 長野県 大鹿村の北方に地獄谷という場所があり、人間や動物の骨がそこかしこにある恐ろしい場所だった。ある時、そうさくじいが肝試しがてらそこに木を伐りに行くと、良いさわらの木がたくさんあったので、小屋をかけて桶皮を取っていた。ある月夜の晩、山鳴りがして何か近づいた来たが、何もなかった。次に山奥から音がして、山男が小屋の前に立ち、「これを食え」と女性の片腕を放り込んできた。驚いたそうさくじいは夜明けを待って家に逃げ帰った。
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スギノセイレイ 1967年 福島県 西光寺に大きな牛をも隠すほどの3本の大杉があった。文化2年頃、この寺の坊さんがこの木を切らせることにした。その前日の暮れ方に見たこともない怪しげな童が3人、手を取り合って泣きながら走り去ったのを見たという人がいた。また、乞食夫婦がこの木の下に宿を取ったところ、夜中に冷たい風で目が覚めた。すると裃を着けた立派な若者が左右に美しい女の人を連れて寂しそうに立っていた。何を聞いても答えないので恐ろしくなり、着物を被って突っ伏して、暫くして顔を上げたら消えていた。夜が明け、村一番の早起きにこの話をすると、千年以上の古木を切ろうとしているから杉の精霊が悲しんでいるのだろうと、他の村人たちと金を集めて木を買い取り、切るのを中止させた。木に斧を入れ始めていた樵が言うには、老木は切ると必ず水を発するものだが、この木は一度斧をあてると水が2メートルも噴出したといって気を失った。そしてこの木を切ることに賛同した6人も次々に死んだ。切られた日が4月4日だったので、この後4月4日にお祭りをしている。
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グインサン 1981年 広島県 ある人が何日も帰らずに西の一本松の方を開墾していたら、大きな坊主が現れ「俺を負うて赤道まで帰れ、帰らんとお前を引き裂く」と言った。恐ろしいので一生懸命に背負って赤道まで行くと、背中から降りて「夜は人間の世ではなくわしらの世だ、お前がおると邪魔になる、俺はぐいんさんだ」と言って去った。その人は家へと帰ったが髪が抜けており、その後病気になり早死にした。
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オウギュウ,フチノシュレイ 1975年 愛知県 東上村の北の雌滝と呼ばれる深淵で、六左衛門という男が鮎を獲ろうとしたところ、水が大いに逆巻き、淵の中から大きな黄牛が現れ、吽々と吼えて襲ってきた。六衛門は淵から上がり宿に帰ったが、急に発熱しうわ言を言い出して、3日後に死んでしまった。深淵から牛が出るのは奇妙だが、淵の主霊だったのだろう。
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キツネ 1971年 福島県 越後の方の狐の罠をかけて通る人が、ソウノデエラで仕事をした。その夕方、小暗くなる頃に山から出てきたら、巡査に行きあった。巡査に明日の8時までに本署へ来いといわれて困り、その山を抜けてきたら、破裂玉の音がした。山へ行ってから警察へ行こうと思っていったら、その警察さまが破裂玉をくって、大きなやつが死んでいた。狐に化かされた話である。
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キツネ 1995年 島根県 一の谷を夜に1人で通ると、ぼけることがあり、狐の仕業だろうという。ある時、一の谷を通っていると、にわかに黒い雲が出て真っ暗になり、雨が降り出した。なかなか目的の家に辿り着かず、夜更けになってやっと着いた。たった14、5町ほどの距離を行くのに一晩中かかったという。
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