ヨクシン 1929年 広島県 ある時行脚僧が山で宿をかりた家では妻が死んだばかりで、主人は自家の寺を訪ねる所だった。僧は留守を頼まれ、死人の枕もとで経を唱えていると一人の僧侶が入って来て死人の衣を剥ぎ顔をいく度もなめて出て行った。この家の寺の僧が欲から生霊になってさ迷って来たらしい。
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チボチノイケ,タタリ 1987年 長野県 佐久町余地のちぼちの池をめぐる話。ちぼちは禅宗で小僧の意。昔,この寺に和尚と小僧がいた。日照りで寺の井戸が涸れたので,和尚は小僧をちぼちの池まで水汲みに行かせた。小僧はその苦しさに耐えかねて池に身を投げ,以後夕方になると池の端に白い坊主のようなものが現れるという噂が立った。また,村の田畑が荒らされるようになり,村人はちぼちの祟りかもしれないと言って恐れた。その頃自成という名僧がこの村を通りがかり,池の辺で金剛経をあげると,池の底から「ありがたいお経を聞いておれも浮かばれる」という声が聞こえた。それ以来化け物は出なくなり,田畑も荒らされなくなった。自成は村人に請われてこの寺の住職となった。
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ロクブノオンリョウ 1956年 宮城県 正保年間(1644~1648)の頃,同町の宿屋に一人の六部が泊まったが宿の主は六部の所持金に目がくらんで殺してしまった。数年後に弟分だという六部が来てその六部が泊まらなかったか尋ねたところ,主人は知らないと答えたが,灰の中から偶然見覚えのある笠の金具が出てきたので弟分の六部は全てを悟り,殺された友のために読経した。すると六部が幽霊となって現れ,この恨みに必ず報いる旨を告げ,弟分も呪法を結んで立ち去った。以後その宿屋には不幸が続いて子孫が絶え,その場所に住んだ者も皆不幸に見舞われたので幽霊屋敷,化物屋敷と呼ばれるようになった。
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シリョウ,タマ 1941年 岐阜県 山の中を歩いているとき、供の者が主人を殺し、死体を竹薮に放ったまま山を下りた。そこへみずぼらしいお坊さんがやってきて、「お前は殺した死骸に取り付いていないと死ぬ」と忠言する。そこで供の者が主人の死体に取り付いていると、朝になると魂が戻ってきて「今日も探し出せんで残念な」と言って死体に入る。夕方また出て行って「今日は地を六尺掘っても探し出す」といい、そのたびに大きな音を立てる。三日目「この位探しても見つからないならあの男は死んだに違いない。これで成仏できる」といって魂は死体に入った。供の男は助かった。
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ヤナギノコンバク,ニョニンノスガタノユウレイ 1956年 長野県 美青年が幽霊が出るという噂を聞き、退治するために現地に赴いた。女の幽霊は古い柳の霊だと名乗り、成仏したいという。青年は自分が僧侶になって引導を引き渡すと言うと、幽霊は喜んだ。仏になった青年はミイラになっている。
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ユウレイ 1990年 大阪府 ある日、旅の僧がお堂で一泊していると女のゆうれいがやってきて「私はここにいるが大阪の両親が供養に来てくれないので頼んできてくれ」と言った。そんなことを言っても誰も信じないと僧が言うと、幽霊は着物の片袖を引きちぎって渡した。大阪の両親はあわてて供養したという。
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タヌキ 1981年 滋賀県 昔法蔵禅寺に六部がやってきた。六部は住職に泊めてくれと頼んだ。住職はやめた方がよいといったが、六部はどんな辛抱でもするといって泊った。その晩六部が寝ていると、丑の刻にわけのわからない化物が天井一杯くらいある目玉をむいて六部を睨みつけた。六部が「狸だろう、こっちへ来て勝負しろ」というと狸も諦めて出てきて、どんな勝負をするのかと聞いてきた。六部は「オノレワ、テンクラテンジャを交代で言い合いをする」といい、言い合いをしたが、じきに狸が言えなくなってしまい、裏山に逃げてしまった。
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シンランショウニン 1979年 山梨県 ある日の夕暮れに、1人の旅僧がやってきて泊まった。翌朝、ここは清浄なところだから何日か行をやりたいというので、堂へ案内した。婆さんが家の内に水の出る所はないものかと捜していると、その旅僧が場所を示した。掘ってみると清水がわき出した。ただし、この水はこの家の入用だけしか出ず、女性が不浄の時には汲んではいけないと約束した。ある時、婆さんが約束を忘れて水を飲んだところ、水が止まってしまったが、坊さんに話して拝んでもらうと、また水が出てきた。後にこの名僧は親鸞聖人であることがわかった。
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ヘビ,カニ 1976年 京都府 昔、綺田に美しい女がいた。ある時、村人が蟹を食べようと沢山取っていたのを、女は魚と交換して助けてやった。次の日、女の父が蛇が蟇を呑んでいるところを見つけ、蟇を逃がしたら娘をやると言った。蛇はすぐに蟇を放して去った。その夜、どこからか男が現れ、昼の約束の通り来たという。まだ娘に話していないというと去った。娘はそのことを聞いて仏前で読経をはじめた。蛇が現れ閨に入った。村人が戸を開いて中を見ると、女は無事で、蛇が数万の蟹に挟まれて死んでいた。村人はその所に寺を建立し蟹満寺と号した。
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カイビョウコタババ 1987年 長野県 昔,ある六部が根津村の長命寺大日堂にお篭りしていると,子猫が沢山集まってきてうるさく鳴く。よく聞くと「国分寺の小太ばば来なけりゃ踊りにゃならん」といっており,大きい怪猫が嵐と共に入ってきて子猫達と共に踊り狂った。六部が仕込杖で怪猫を刺すと,血を滴らせて逃げていった。次の日,「小太ばば」が門前の小太郎の家の老婆であることを知り,訪ねてみると,老婆は昨日足を痛めて寝ているという。六部がお薬師様に祈願して法力を身につけ小太郎の家に乗り込むと,老婆は怪猫の本性を現して尾野山に逃げ込んだ。家を探すと,縁の下から老女の白骨が現れた。小太郎は薬師様に願をかけ,六部の助けで尾野山に飛びつけて怪猫を仕留めた。今も国分寺の裏に六部の石塔があり,小太郎屋敷という地名も残っている。
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タヌキ 1976年 山形県 昔、3年に一度若い娘を人身御供に差し出さないと凶作になるという村があった。ある年の秋に、1人の僧が訪れ、老夫婦から習わしを聞いた。僧は明神神社の天井裏に潜み、古狸がべんべこ太郎という犬を嫌っていることを知った。翌年の春、人身御供を差し出す時、僧がべんべこ太郎を連れてきて、古狸を退治したという。
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クビヅカ 1956年 宮城県 寛文頃(1661~1673),津谷東禅寺住職木陽和尚は学徳が高く尊敬されていたが,無実の罪で訴えられ打首に処せられる。和尚は村の方を睨んで,「もし罪名の如く破戒の罪があれば我が首は地に落ちるが,無実なら首は飛び上がるだろう」と言い残した。刎ねられた首は何処ともなく飛んでいき,その後村に怪異が続いた。食事中血塗れの腕がぶら下がってきたり,夜更けに怪しい呻き声が聞こえたり,針仕事をしている女が後ろ髪を掴まれて引き倒されたりした。1,2年後,日山という托鉢僧が秋の夕方野路を通ると,後ろから自分の名を呼び止める声が聞こえるが姿が見えない。よく見ると一人の僧形の姿があり,「自分は無実の罪によって刑死したが,供養する者もなく,妄執で浮かばれず迷っている。供養してもらいたい」と頼んだ。翌朝その辺りの草叢を調べると,石に噛り付いたままの骸首が見つかった。日山が懇ろに弔ってやると,その後村の怪異は絶えた。村人達も供養碑を建てて厚く祀り,参詣者が絶えなかった。
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ウジガミ,クロゲノヨウカイ,ヒヒ 1934年 静岡県 氏神の祭日の数日前になると、年頃の娘のいる家に白羽の矢が立ち、人身御供とされた。旅の僧がこれを止めんとして、真夜中に見張っていると、黒毛の妖怪が出てきて「信濃の国の悉平太郎に知らすなよ」と言うのを聞いた。僧は悉平太郎を探し、翌年大犬を一匹伴ってきた。犬は狒々と戦いこれを倒した。
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ソウ 2000年 以八という上人が上洛する時にある宿に泊まろうとすると、ちょうど宿の女房が亡くなり、亭主が檀那寺の僧を呼びに行く間通夜を勤めることになる。しばらくして鬼僧が現れ、舌を出して死者を舐めはじめる。驚き見まもるところに亭主が寺僧を伴い帰宅する。見るとその僧は先刻の屍骸をなめる僧であった。葬式の斎餐や布施をむさぼり求める悪念が妖魔の悪相を表したものと悟り、その僧にありのままを告げると慙愧の心を感じて懺悔した。
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ウスギヌヤマノヨウカイ 1956年 宮城県 上沼村の東北部北上川の近くに薄衣山という岡があり、そこは村の墓地で人家はなく、老松が茂って昼も薄暗いような場所で、得体のしれない妖怪が出て人々を怯えさせていた。この山の南方の弥勒寺村(中田町)に、剣道の心得のある豪胆な米三という若者がおり、化け物退治を決意した。病臥している妻を理由に家人が引き止めるのも聞かずに出かけ、松の大木にのぼって見張っていると、使いの者が「妻が命を落とした」「出棺だ」と迎えに来た。米三はそれを怪しみ、もし本当だとしても、どんなことがあっても退治するまでは家に帰るまいと決心したので我慢して帰らなかった。暫くすると我が家の方向から弥勒寺の方へ妻の葬儀と思われる提灯の行列が見えた。妻の亡霊とおぼしき白いものが飛んできて、恨み言を言い足元に手をかけるばかりになったとき斬り払うとギャッという叫び声がして、ドドッと転がり落ちる響きがした。朝になって降りてみると夥しい血溜りがあり、血痕が北上川まで続いていた。家の妻は生きており、それ以後怪異はとまったという。
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オニ 1922年 徳島県 昔、鬼が住んでいて人を喰い、財を掠めていたが、法然上人によって改心させられ、仏道に入った。鬼は罪を悔いて死んだので、そこに鬼骨寺を建てた。鬼骨寺では、今でも鬼の牙を秘蔵しているという。
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ヒヒ,シラハノヤ 1989年 長野県 遠州の府中という村では、秋の祭には氏神様に人身御供として娘を差し出さねばならず、それは白羽の矢で決定されていた。あるとき、村にやってきた六部が氏神に泊まったところ、何者かが「信州信濃の光前寺、へえぼう太郎に知らせるな」と踊っているのに気づいた。翌朝村に立ち寄った六部は、村人から人身御供の話を聞き、化け物を退治するためにへえぼう太郎を探して信州へ向かった。
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ロウニン,ソウ,サイカイ,キツネ 1976年 岡山県 備中千冠村で家を建てようとして地面から小瓶を掘り出したところ、毎夜夢に僧が5,6人現れるようになった。他所へ移ると今度は浪人のような人が夢に現れるようになり、ついには病気になった。小瓶を元のように埋めると治った。狐の仕業だろう。
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ジゾウ 1922年 宮城県 唐桑村と鹿折村の境の峠には一体の地蔵がある。元禄寛永の頃、峠を夫婦の六部が通りかかったときに妻が産気づいて赤子を産んだ。夫が人を頼んで戻ってみると母子ともに姿がなかった。その後世安楽を願って地蔵を建てた。悪戯で沢に転がされたときには夢枕に立って所在を告げた。
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ヨウカイ 1932年 埼玉県 妖怪が出るという廃寺に旅僧が泊まっていた。すると次々と化け物がやってきた。旅僧はやってくる化け物の名前を判じて退治した。
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