オモイ,バケモノ,ロウジン 1973年 山梨県 炭焼きが大和田山の山小屋に泊まり、串にさした餅を焼いていると見知らぬ老人が一人入ってきて向こう側に座った。そして隙を伺っては餅を取って食うなどした。炭焼きが考えることを次々と言い当てるが、炭焼きが薪の棒をひざに当ててくじくと節のかけらが化け物(老人)の目にあたった。化物は「思うことより思わぬことのほうが怖い」といって逃げた。
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バケモノ 1992年 奈良県 杣師が山仕事をしていたら、わけのわからない男の化物が現れた。その男は、杣師が考えていることを次々と言い当てていった。それで構わずに仕事をしていたら、斧で切った木の屑が飛び、男に当たった。すると男は「お前は俺のわからんことをする」と言って、去っていった。
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ヤマノヌシ,テング 1973年 山梨県 大和田山で杣が仕事していると1人の小僧が相撲を取ろうと言う。仕方なく相撲を取ろうとすると山の上から「そんなものと相撲を取ると死んでしまうぞ」と声がする。その声に驚き杣が相撲を取らずにいると小僧はどこかへ行った。小僧は山の主(天狗)が化けて出たものである。
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サトリ 1960年 福島県 昔爺様が山小屋で火に当たっていると、得体の知れない化け物がやって来た。爺さんの心の中を見透かすさとりの化け物だった。柴を折ったときにはねて化け物に当たると化け物はおびえたという。
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バケモノ,モンスケババア 1996年 岩手県 おとめ沢に昔化物がいて、夜な夜な人を捕らえる。おとめという女もその化物にとらわれ姿を消し、おとめ山に留まって門助というものの妻となったが、故郷が忘れがたく、暴風雨の暗夜に常に里にあらわれた。以来、暴風雨の夜は「門助ばばあ来る」とおそれた。
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シンボク 1928年 台湾 明治の末頃、内地から台湾に渡った樵夫たちがいた。この樵夫たちが大木を切る仕事を請け負ったが、源五郎という男がこの仕事はやめようと言った。不思議な夢を見て、その中で仙人姿の老人が神木を切ると血が流れ、山が鳴動して異変が起こるといったのだという。翌朝、作業にかかろうとすると、木の上から血が落ちてきた。結局、木を切り倒すのは中止になり、酒を供えて注連縄を張り、謝罪して樵夫小屋へ引き上げたという。
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アンドン 1956年 宮城県 太郎山の麓にいた二人の兄弟が山に行くと、白髪の老婆が行燈のそばで麻績みをしていた。この老婆を化け物だと思い、何度も鉄砲を撃ったが死なず、弟が家に玉を取りに行って戻ると、兄はすでに食われていた。弟が老婆ではなく行燈を撃つと化け物はいなくなった。狸が化けていたのだという。
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バケモノ 1941年 不明 お大師様が行をしていると、どこからか「いろはにほへとちりぬるをわか」という音がする。その方へ言ってみると、でかい顔をして目の幾つもある化け物がでかい口をあけて待っていた。化け物はひもじくてしかたがないから、人間を食わせてくれと言う。お大師様はその怪物の口の中に飛び込み生き仏になった。
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メイドウ,タタリ,オノノケヒト,オニビ 1974年 和歌山県 紀伊国高野川の北に非常に険しい山があった。この山に人が登る事があると忽ち鳴動し、樵夫が木を伐ると祟りをなして病気になるという。ある至孝の農民が、病床の母に頼まれた山鳥を狩りに山に入り、鳥は得たが道を失った。杉の陰に燐火と思うものが燃え農民を呼ぶ声がした。見ると貴人がいて、自分が祟りをなしていた、地面の下を探って寺に移してほしいと言う。山を下りて後、法師と山を探ると骨があり、それは小野毛人のものであった。
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ウスギヌヤマノヨウカイ 1956年 宮城県 上沼村の東北部北上川の近くに薄衣山という岡があり、そこは村の墓地で人家はなく、老松が茂って昼も薄暗いような場所で、得体のしれない妖怪が出て人々を怯えさせていた。この山の南方の弥勒寺村(中田町)に、剣道の心得のある豪胆な米三という若者がおり、化け物退治を決意した。病臥している妻を理由に家人が引き止めるのも聞かずに出かけ、松の大木にのぼって見張っていると、使いの者が「妻が命を落とした」「出棺だ」と迎えに来た。米三はそれを怪しみ、もし本当だとしても、どんなことがあっても退治するまでは家に帰るまいと決心したので我慢して帰らなかった。暫くすると我が家の方向から弥勒寺の方へ妻の葬儀と思われる提灯の行列が見えた。妻の亡霊とおぼしき白いものが飛んできて、恨み言を言い足元に手をかけるばかりになったとき斬り払うとギャッという叫び声がして、ドドッと転がり落ちる響きがした。朝になって降りてみると夥しい血溜りがあり、血痕が北上川まで続いていた。家の妻は生きており、それ以後怪異はとまったという。
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オニ,モチ,シュテンドウジ 1949年 岡山県 樵の親方が多数の弟子を連れて深い山に仕事に出かけた。弟子の一人が、人影の無い森陰に一重の見事な紅白餅を見つけ、あまりに旨そうなので食べてしまった。そうすると面相が一変し暴れるようになり、日夜山奥をさまようなど鬼のようになった。仲間が連れ戻そうとすると、「もう鬼になったので近寄るな」といい、最後に連れ戻しにいった者を殺して食べた。その後、親方に罪を告白し、仲間のもとに戻るが、再度山に入り、「丹波の大江山へいく」といい飛び去った。これが後の酒呑童子だという。
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タヌキ,ハッチョウノダダボウ 1990年 福島県 八町の宮にダダ坊という化け物がいて子供を食うので、盲目の中井坊に退治を頼んだ。中井坊はすり鉢をかぶり山鍬と才槌を持ってお宮に行き、化け物に殴りっこをしようと持ちかけてすり鉢を殴らせ、自分は鍬と槌で叩いた。化け物は血を流して逃げていった。翌朝村人と一緒に追うと、お宮の欅の洞穴に何十年も経った毛の薄くなった大きな古狸がいたので、殺して狸汁にした。化け物も出なくなった。
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マツ,カイブツ 1922年 岩手県 上閉伊郡栗橋村字古里に大きな松の木があり、日光を遮っていた。耕作物の邪魔になるので伐り倒そうとしたが、次の日になると元に戻っていて伐ることができなかった。ある日夢に一人の翁が現れ、木の伐屑を毎夕方に焼き棄てれば成就すると告げた。言うとおりにすると木は倒れ、それを用いて船を造った。しかし、不思議なことに船は一夜のうちに姿を消してしまった。あるとき、漁夫が橋野川の川上で得体の知れないものを見つけ、大权で突き刺した。一度帰り、次の日再び現場に行くと何もいなかった。探している内に漁夫は狂い、あたりは風雨となり大洪水が起こった。一夜たつと河口に突如として奇岩が現れた。人々は、漁夫の突き刺した怪物の化身だと言い囃した。
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ダイジャ,カマ 1981年 長野県 作男が丸山の森でもや刈りをしていると、睡魔に襲われ、眠ってしまった。目を覚ますと大蛇が男を呑もうとしていた。そのとき手にしていた鎌がひとりでに大蛇に切りかかり、大蛇は消えうせた。その鎌を祀ったのが山の神様という祠。
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オオオトコ,ヤマノヌシ 1976年 新潟県 槍が上手な狩の名人が、御神楽岳のおりんという場所に出かけたところ、夕方になって迷ってしまった。煙草を一服していたら、6尺(180㎝)もある化物が出てきた。「何処から来た」と聞かれたので、狩に来て迷ったと言ったら、「ここは人間の来るところではない。すぐ帰れ。俺に会ったことをしゃべったら、命は貰う」と言われた。狩の名人はそこを立ち去って家に帰り、このことは長らく黙っていたが、臨終の床で周りの人に始めて明かした。この大男は山の主だったのだろう。
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バケモノ 1965年 山形県 欲ばりの男は、飯も喰わずにせっせと働くあねこを首にしたが、ある日隠れて見ると正体は大飯喰らいの化物だった。脅えた男は、その化物が菖蒲と蓮を恐がることを利用して退治し、心を入れ替えて自分でせっせと働いた。
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ヒイ,タヌキ 1990年 大阪府 ひいという古狸の化物がいた。夕方男衆が外で世間話をしていると、目を広げたひいが見ていた。「それだけの目か」と言うと、大きな目をさらに大きくしてバケツみたいな目をした。このようなやりとりをしていたら余程の大きさの目になり、怖くなって逃げた。翌日、目を破裂させて死んでいた。
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タヌキ 1991年 愛媛県 話者が山で木を切っていると大きな音がする。誰か松でも切っているのかと見に行くが、なにもない。炭焼きのために泊まり込んでいると、山の中から「おーい、おーい」と呼ぶ。返事をしても誰もいない。そこで罠を仕掛けると、次の日狸がかかっていた。
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キツネ 1954年 神奈川県 大下の爺様が釣りに行き、山道で昼寝する狐の頭の先をとんとんと叩いて通った。するとあたりが真っ暗になり、近くの家の宿を借りたが、ずっと先に行って寝てくれ言われたので先へ行くと、本宿の池に落ちたという。また、昼寝する狐を嚇して畑を打っていると、遠くから葬式が来て棺をおいていった。木に登って見ていると、棺から化け物が出て来たという。
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カッパノヒデンセッコツヤク 1956年 岩手県 旧仙台領江刺郡の北上川畔二子町城下に住んでいた小田島大炊之助という侍の家で,夜厠に女中衆が入ると怪物が出て悪戯をする。主人が夜上厠してみても何事も起こらないので,女装して屈んでいるとやがて冷やりとしたこわばったものが触ってくる。大炊之助がそれを捉え,隠し持った短刀で斬り離すと怪物は叫び声を上げて逃げ去った。よく見るとそれは水掻きのある痩せた腕であった。それから三日目の夜,夢現の中で化生の者が大炊之助の枕上に現れた。跳ね起きて脇差を構えると,化生の者は平伏して「この河の鎧が渕に棲む河童だが,向後悪戯はせぬゆえ腕を返して賜れ」という。切り離した腕を返しても仕様があるまいというと,それには秘薬があるからというので,秘薬の処方と引き換えに腕を返した。河童は妙薬を取り出し,見事に腕を継ぎ合わせてみせた後,その処方を伝授し,帰っていった。手負いの者の治療に大変もてはやされたが,代替わりの後はさほどでもなくなった。
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