エンコウ 1955年 島根県 浜田市周布の津摩部落は海岸にあり、漁夫が夜に沖釣りに出ていると「行こうか……」という声がする。漁夫が錨を上げて櫓を立て、「来るなら来いっ」と怒鳴りながら、後ろを見ずに漕ぎ帰った。翌朝、船は木っ端微塵に砕かれていて、全てえんこうの仕業であると言われている。
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タコ 2002年 山口県 昔、甚平という漁師が住んでいた。魚を捕ることが巧みで近隣の者は皆知っていた。ある日甚平が岩の近くで魚釣りをしていると、急に船が傾いた。見れば大きな蛸の足が船縁を掴んでいた。甚平はその足を包丁で切って持って帰った。その味を覚えた甚平が翌日も岩へ行ったところ、その日も蛸が現れた。こうした日が5日続き、8本の足が3本にまで減った日に、甚平はこの蛸を捕ってやろうと包丁の代わりに縄を持っていった。それきり甚平は帰らず、主のいない船が夕方に浦へ流れ着いた。村人達はきっと蛸に食われたのだろうと噂した。それ以来その岩を甚平岩と呼ぶようになった。
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マツ,カイブツ 1922年 岩手県 上閉伊郡栗橋村字古里に大きな松の木があり、日光を遮っていた。耕作物の邪魔になるので伐り倒そうとしたが、次の日になると元に戻っていて伐ることができなかった。ある日夢に一人の翁が現れ、木の伐屑を毎夕方に焼き棄てれば成就すると告げた。言うとおりにすると木は倒れ、それを用いて船を造った。しかし、不思議なことに船は一夜のうちに姿を消してしまった。あるとき、漁夫が橋野川の川上で得体の知れないものを見つけ、大权で突き刺した。一度帰り、次の日再び現場に行くと何もいなかった。探している内に漁夫は狂い、あたりは風雨となり大洪水が起こった。一夜たつと河口に突如として奇岩が現れた。人々は、漁夫の突き刺した怪物の化身だと言い囃した。
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エンコウ 1938年 島根県 えんこうが馬を捕らえようとした。けれども逆に馬に引きずられてしまった。
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ウシオオカミ 1991年 島根県 漁師が浜へ出て木を拾っていた。海から潮を吹きながら牛狼が上がってきて大きな木に化けた。漁師がそれを拾ってもって帰り、家につくと木が礼をいったので驚いて切りかかると正体を現した。
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キツネ 1977年 和歌山県 昔、ある人が田辺まで行って魚を買って帰ってきたが、途中の峠で狐に憑かれて帰ってくることができずに尾根まで登ってしまった。村ではその人が帰ってこないので皆で探していたところ、峠から迷い歩いたところに点々と魚が落ちていたので見つけることができたという。
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エンコ 1975年 愛媛県 昔、舟の主が竹の子を食べていたら、えんこが来て、くれと言った。明日来るように言い、竹の本の所を炊いて用意しておいた。翌日来たえんこに食べさせると、その堅さに驚き、「人の歯は何と丈夫なんだろう」と言って逃げて行った。
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エンコウ 1955年 島根県 昔、川戸にいた殿様が馬を洗いに江川の畔に出ると、えんこうが馬の綱を体に巻き付けて引きずりこもうとした。驚いた馬は城へ走り込み、えんこうは捕まった。その晩、えんこうが殿様の枕元に現れて、今後は決して村人を害さないことを誓い、証拠として縁の上の岸壁に文字を刻んだ。
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テング,ヒノタマ 1956年 群馬県 川にも天狗がいる。川で漁をしている男がいて、ある日、ばかに魚がとれる日があった。男が薄気味悪くなって来た時、ゴロゴロッと石の落ちる音がして火の玉が転げてきた。それと同時に網が急に重くなり持ち上げられなくなった。男は「天狗が出た」と叫んで逃げ帰り、2,3日寝込んだという。
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エンコウ 1938年 島根県 川端で遊んでいる牛をえんこうが捕らえようとした。けれども牛が驚いて駆け出した拍子に、綱がえんこうの体に巻きついた。騒ぎを聞きつけて集まった人に対して、えんこうは四十雀が5羽そろって椿の枝にとまるまで子供にいたずらをしないと約束して許してもらった。
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エンコウ 1955年 島根県 馬を洗っているとえんこうが取り憑いたので、引っ張り返して捕まえたという。君谷村の玉泉寺では、今後川で人をとらないと約束して証文を入れ、口羽村の宗林寺では、和尚が岩に文字を刻んで、その文字が見えなくなるまで人をとらないと誓わせた。えんこうは毎晩出ては岩の文字を消そうと撫で続けたという。
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キツネ 1938年 長野県 魚屋が売れ残りをリヤカーに載せて帰る途中、狐に化かされ、稲の植えてある田の中を一夜中リヤカーを引いて歩いた。翌日その田には海のものがたくさん落ちていた。
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エンコウ 1955年 島根県 正保の頃、那賀郡今福村宇津井の庄屋が川岸に馬を繋いでおくと、毎晩えんこうがこれを解く。ある日、馬屋に行くと、桶の中にえんこうがいたので、捕まえて打ち、結局許したが、やがて庄屋は病に伏した。夜な夜な庄屋の名を呼ぶ声がするので、声を頼りに追いかけると、橋の袂でえんこうと組み打ちになり、ついに組み伏せた。
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エンコ 1983年 愛媛県 孫兵衛という馬使いが海で馬を洗っていると、エンコが出てきて馬を引き入れようとした。馬は山へ逃げて行き、孫兵衛はそのエンコを捕まえて殺そうとすると、エンコが悪さをしないと約束したので命は助けた。
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カワウソ 1929年 長崎県 何とも知れぬものが船にのぼろうとすることがある。ある時、沖に人のいない船があり、強気の男が行くと、果たして出てきた。やっとのことで帰ったが、これは河獺のすることだろうと言う。
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ケンムン 1977年 鹿児島県 浜でケンムンが魚を釣っていた。魚を釣ろうと何時間もがんばっていた。それを見ていた人は怖くなり、浜道は通らずに山道を通って村に帰った。
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ヤマオトコ 1936年 岩手県 牛方が牛3頭に魚をつけて運んでいた。昼飯に魚を食べていると山男が来て、魚も牛も食われてしまった。牛方は逃げて、船の下に隠してもらった。牛方の行方を聞かれた船矧はうそを教えて脅されて逃げる。船矧は松の木に登って逃げた。木に登って追ってきた山男を、枝を折って淵に落として殺した。この話では牛方も船矧も助かる。
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アカブサー 1975年 沖縄県 漁師が夜の海に出ていると全身真赤な髪の長い赤子くらいの大きさのアカブサーが現れた。そして沢山魚をとってくれた。仲良くなった漁師は毎晩大漁だったが、夜中でも連れ出されるのでだんだんいやになり、アカブサーの嫌いなタコを投げつけると逃げて行った。それから数日後、漁師はアカブサーに惑わされて自分の家を焼かれてしまったという。
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イソテング 2002年 愛知県 おじいさんが若かった頃、鳶ヶ崎に漁に行ったとき、今にも雨が降り出しそうな暗い夜だったが、面白いほど魚がとれ腰のびくはずっしりと重くなっていた。突然あたりが明るくなったので驚いて空を見上げると海田の海の方から大きな火の玉が2、3こちらに飛んできた。磯天狗と思いわらじを頭に載せ一心に念仏を唱えた。そのうち火の玉は南の方へ飛んでいったが、びくの魚はなくなっていた。
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ケンムン 1977年 鹿児島県 月夜に魚釣りに出たら、ケンムンの火が千個も万個も群がっていた。翌日、草を切りながら浜辺を確かめてみると、ケンムンの足跡が千も万もあった。
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