タヌキ 1986年 埼玉県 名栗村の炭焼きのじい様が夜に寝酒を飲んでいると、墨染めの衣を着た坊さんが尋ねてきたので、ご馳走した。それが何回か続くようになったのでじい様は怪しみ、焼き団子を進ぜようと言って火箸でいろりの灰の中から石をつまみ出し、坊さんの衣にくるんだ。すると坊さんは「あっちっち」と言って外へ飛び出して行った。次の日、山道に古狸がやけどをして死んでいた。
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テング 1973年 京都府 漆谷の分水嶺近くの山にある立て岩と千本松は天狗さんの休憩所であった。燈籠杉にいつでも灯がともる。100年程前、炭焼きのお爺さんが天狗につままれて行方不明になってから、部落中の人が鉦や太鼓をたたいてさがしたら、4日目にやせて青ざめて帰ってきた。
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コジキ 1984年 福井県 昔、大晦日にある家に乞食が現れて、宿を請うた。家の人は哀れに思って泊めてやった。翌朝そっとのぞいてみると、乞食は冷たくなって死んでいた。その家の人は火葬場へ運ぼうと思ったが、正月で誰も手伝いにきてくれないので、夜になるのを待って囲炉裏で燃やしたが、いくら燃やしても燃えず、いぶかしんで火ばしでつついてみたら、いつの間にか黄金に変わっており、大晦日に太い薪を燃やすのはこのためであるといわれている。
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ザイホウ 1983年 茨城県 入檜沢の奥の尺条山のふもとの広々とした耕地には昔長者が住んでいたという言い伝えがある。50年くらい前のこと、ある人が代掻きをやっていて、昼休みに馬が逃げ出して田の中に入ってしまった。馬を田から追い出すと馬の足の1本が真赤になっている。驚いて足を点検してみたが傷ではなく、そこには朱がべっとり付いていた。その人は財宝があるのではないかと田を掘り返してみたがとうとう馬が朱を踏んだ所には出くわさなかった。
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テングサマ 1995年 島根県 横道のある猟師は、山で山伏が振る鈴と金の常箸を拾って以来、天狗さまを尊び、毎日山に行った。山ン婆が飯を炊くので山へ行ってはならない2月9日も、猟師は天狗山に行った。大きな猿のような爺を打つと下へ落ちていったが、それは天狗さまだった。その後、大雪の晩に、猟師は行方がわからなくなり、天狗山の奥深くで、大怪我をして見つかった。
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ヨアケノノナカデノコエ 1953年 青森県 年の暮れに困って遠い親類へ金を借りに行くと、夜明けに野中で呼び止められ、「金は借りられぬ。それよりも家へ戻って油鍋で小豆を煮よ」と言われ、そのとおりにすると、カギの上からヨイカといって何かとびこみ、それから長者になった。
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ビシャモンサン 1972年 鳥取県 正直な下女が元旦の朝に大事な火種を絶やしてしまい、死んだ人を焼いているおじいさんから火種をもらおうとすると、死んだ人と一緒ならやるといわれ、仕方なく死んだ人を負ぶって自分の部屋へ寝かせた。夜になって仕事を終えた下女が部屋に戻ると死んだ人が金になって光っている。毘沙門さんがくれたものであるという。
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コエ 1974年 新潟県 貧しい爺と婆が火を炉端で火にあたっていると、危ない、危ないという声が聞こえる。大晦日に二年木を焚いてあたっていると、いつもの声がいっそう大きく聞こえてくる。爺がその声のするほうへいくと川端で金甕が水に落ちそうになっているのをみつけ、持ち帰ると大金持ちになった。
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ヤマチチ 1943年 高知県 昔、大晦日の夜に馬曳きが山ちちに会った。馬に積んでいた人参や大根、砂糖、はては馬まで取られた。その後、山ちちが釜で寝ていたので、重石をして、下から火を焚いた。山ちちは助けてくれといったが、構わずに焚いた。何も言わなくなったので開けてみると、真黒に焦げて死んでいた。
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ヤマノジサン 1986年 愛媛県 夜専門の猟師が火にあたっていると猟犬が身体を水にぬらして何度も薪を消してしまう。猟師は怒って犬を殺す。すると突然髭をボウボウに生やしたおじいさんがあらわれて、火にあたり出した。猟師はお爺さんが怖くてたまらずにいたが、じいさんが眠り始めたので一生のうちに1、2度しか使えない八幡大菩薩に関係のある玉で鉄砲を打った。じいさんは谷底へころげ落ち、誰かがすがりついて泣いているのがわかった。猟師は逃げ出し、1年ほど経った後その場所へ行ってみると白骨になっていた。これが山のじいさんではないかという。
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テング 1993年 福井県 大きな岩石があり、ここの天狗がいると恐れられていた。ある日この近くで三左衛門という人が炭を焼き始めた。天狗が現れ「ここはわしの庭だから、すぐ帰れ。笛を吹き、太鼓が鳴ったら下山しろ」という。無視していると数日後に天狗が現れ「もう一度合図するので、帰れ」という。風が強くなり、雨も降り出したので下山した。あまりの大嵐となり、三左衛門の家は倒れた。
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ムジナ 1931年 埼玉県 左京と吉左衛門という二軒の家があったが、吉左衛門の家は絶えてしまった。残った左京の家には毎夕狢がやってきたが、ある日爺さんが焼いた石を与えたところ、手を焼いてしまい、それから来なくなった。その後左京の家も絶えた。
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フルダヌキ 1955年 岡山県 ある雨の夜寺に老人がやってくる。老僧は青石を焼いておいて老人に在所を尋ねる。日が暮れたので宿を乞いたいということであった。老僧は夕飯も過ぎたが蕎麦焼きならあるといって焼いた青石を老人の膝に投げると、老人はあっと叫んでそのまま出て行くが、谷で死んだ。翌朝行って見ると谷底に穴があり、そこで古狸が焼け死んでいた。膝と思ったのは陰嚢であった。その土地の名を玉落谷という。
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バケネコ 1984年 山梨県 左甚五郎が山崎新田を通ったとき、苦しんでいる女がいたので背負ってやったら、それは石地蔵だった。人家にたどり着いたら、その家の婆が亡くなっていて、爺が寺に知らせに行く間留守番をした。火を絶やすなと言われたが、うっかり眠って火を絶やしたら、死んだお婆さんが立って出て行こうとしていた。甚五郎とお婆さんが揉み合いになったところへお爺さんが帰ってきて、屋根に石を投げたらお婆さんは倒れた。火を絶やしたので古寺の猫が来て、屋根の上を歩いて死体を動かしたのだという。
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テング 1969年 埼玉県 大正末期か昭和初期ごろ、老年期の男が9月のある日に行方不明になった。さがしたが見つからず、1週間ほどたったある日、裏山から家に戻ってきた。その間、どこにいたのかわからず、気がついた時には裏山にいたという。村人は天狗にさらわれたと解釈した。
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オニ 1936年 山梨県 馬方が馬に鰯を乗せて帰宅する途中、鬼に出会って松の木に登って隠れた。鬼は鰯も馬も食べてしまった。馬方は鬼の家までつけていき、2階に隠れていた。馬方は鬼が味噌を取りに行く間に、鬼が焼いていた餅を食べてしまった。その後、鬼が釜の中で寝たので、蓋をして火を炊いた。鬼は焼き殺されて脂になった。馬方はそれを売って長者になったという。
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テングサン 1963年 岡山県 話者の身内の炭焼きの爺さんが、夜明けの1時間半くらい前に窯に行ったら、宙からザランザランと音がした。上を見たが何も居なかった。天狗さんだろう。
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テング 1933年 長野県 百年余り昔、婆が夕食の仕度をしていたら、勝手口に大男が立っていた。大男に手紙を出してくれるように頼まれ、目を瞑って開けたら霧ケ峰に来ていた。そこには天狗が大勢いた。天狗に城下が火事になっているが、手紙の御礼に守ってくれることを約束され婆が急いで戻ると婆の家がある上町だけ焼け残った。
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ビンボウガミ 1934年 昔、貧乏なお爺とお婆がいて、大晦日の夜にも米なく、仕様がないので炭を半俵もくべて、火をドカドカ焚いていた。そこへ急に烏帽子をかぶった男がきた。男は貧乏神であったが、火にあたらせてもてなしたところ、大きな金の玉をもらった。
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ヒヒ 1976年 新潟県 延宝か天和のはじめ、ある山家の老人が山から帰ってこなかったので、その妻がいぶかしがり、人に頼んで山を捜索してもらった。すると山奥に老人の笠とわらじが落ちていたので、それを怪しみ、村で山狩りをした。ところがなにもなかったので下山しようとすると、風が藪を吹くような音がしたので振り返ったところ、赤熊を被って目が星のように光る獣が襲ってきた。大力の若者が鎌で眉間に切りかかったが、若者を谷へ投げ落とした。残った者は逃げ帰り、越後公へ訴えた。そこで江戸より軍師を呼び、山狩りを行わせた。獣が現われたので、それを鉄砲で仕留めた。
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