ムスメジゾウ 1956年 宮城県 ある所に三里四方の沼があり、盆になると蓮華の花がいっぱい美しく咲き、近郷近在の人々でたいへん賑わった。しかし取ると罰があたるので、蓮華は取るなとかたく言われていた。あるとき隣村の長者の娘が下女を連れて蓮華を見にきて、美しさのあまり、下女がとめるのも聞かず1本取ってきてしまった。皆には隠して自分の部屋に飾って喜んでいたが、7日ほどたつと、「花からお姫様出る」「お姫様と沼に遊びに行く」と騒いだり、1人で家を出たりしはじめ、とうとう夜中にどこかに行ってしまった。どこにも見つからず、下女は怒られるのが怖くて蓮華のことを黙っていたが、門の外から沼の方へズーッと蓮華の花びらが続いているのが見つかり、沼で娘のシカバネがあがった。泣く泣く野辺の送りをすませた後、夜にまっかな火玉があがる、娘の幽霊が出る、などの評判が立って、沼には誰も行かなくなった。長者の家でも娘がどこにも行きかねて迷っているのだと哀れみ、沼のほとりに地蔵を建てて長く祀った。そのうち、可愛い娘が生まれると、地蔵に願をかけに遠くから参詣に来るようになり、今も続いているという。
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テンニョ,ハゴロモ 1967年 福島県 葉山権現の傍に大池で、ある暑い日のこと数人の天女が水浴びしていると、1人の漁夫が通りかかった。天女は驚き昇天したが、1人の天女が気付かず水浴びを続けたので、漁夫は羽衣を見つけ、家宝にしようと持ち帰り、庭先に埋めた。天女は昇天することができず、漁夫が羽衣を持っていることを知り、卑しい女に化けて男の家に行き、とうとう夫婦となり1人の子をもうけた。この子が3才の時、庭先から羽衣を見つけ、母にそれをつげたところ、天女は喜びすぐに昇天した。残された子は非常に仏好きで、4才のとき落髪し、後には高僧になった。
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アカトンボウ 1974年 弘化3年6月17日に、浪花の人である雲鶴という相撲取りが来て言うには、いま島の中辺を通っていたところ、南の方から空中を真っ黒になって飛んでくるものがいたという。近くで見ると、それらは皆赤とんぼうで、数万匹が北を指して飛んでいった。
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カナヘビ,ショウテン 1929年 岩手県 盛岡在の太田村芝久保という村で元文4年5月11日の昼頃、小堰の杭に一匹のカナ蛇が来て這い上がった。それをみた佐野家の下女は気味悪くなり家に駆け込むと、すぐさま雲が流れ真っ暗になり大風震動雷電し、龍が天上するに相応しい光景の中、蛇は昇天していった。
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ツルニョウボウ 1934年 新潟県 昔々、山奥にいた狩人がどこからか訪ねてきた美しい女を嫁にもらった。女は暇さえあればキリキリシャンシャンと機を織っていた。秋の初め頃、布が出来上がり、天女の羽衣と言われ、お城のお姫様が買った。家に帰ると女はいなくなっていていた。狩人は百姓になり、ある日山深くに行くと、松の木の上に羽毛が1本もない鶴がいて、懐かしげに見下ろしていた。
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テンドウサマノバチ 1915年 鳥取県 湖山長者が広大な稲田を多くの早乙女を雇って1日で田植えをしていた。ある年の田植時、1匹の猿が子を逆さに背負って通った。早乙女たちはしばらく眺めていたため、日暮れまでに植え終えることができなかった。すると長者は扇で夕日を差し招き、1間ほど東に返した。それで植え終えることができたが、天道様の罰で広大な稲田は1日で湖水になったという。
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(ハッキ) 1982年 京都府 享保11年10月18日4ツ時、幅1間程の白気が坤の方角から艮の方角へ飛んだ。同夜、寺町通仏光寺下る町で何者かによって15軒の家の前に5丈取程の白餅が1つ宛置かれていた。
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ハト 1976年 京都府 近衛殿が幡枝の八幡で鳩を10羽放生した。田地を荒すと地人が訴訟し、石清水八幡へ送った。翌日悉く本の所へ帰った。
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エイ 1978年 沖縄県 あるとき、マサリヤという男が浜辺で釣りをしているとエイという大魚がかかった。たちまちエイは美女となり、マサリヤと契りを交わし子どもも生れた。ある日、マサリヤが浜辺を歩いていると子どもが現れて、エイのいる竜宮へとマサリヤを誘った。竜宮からの帰りに美酒がいくらでも出てくるルリ壺を貰った。マサリヤはこの壺を誰にも見せないようにしていたが、豊かになり心がおごると多くの人に見せてしまった。すると、ルリ壺は白鳥となり、東へと飛び立ち宮国のシカブヤーという家の庭木にとまった。家の主人の夢に白髪の老人が現れ、旧9月の乙卯に物忌みをして白鳥を祀れば世果報を与えると告げた。
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(クワカラエダ) 1977年 静岡県 遠州豊田郡月村の百姓である作十が持っていた古い鍬から、枝が出て花が咲いた。枝は鉄色で鍋つるのよう。花はここめさくらで、色は金銀のようだった。
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ウラシマタロウ,ツル 1973年 香川県 浦島太郎は、箱崎から竜宮へ行った。三年間竜宮で暮らしてから人の世に帰ったが、人の世では千年経っていた。不老浜というところでしばらく暮らしていたが、ある日箱浦で玉手箱を開けた。すると、中から煙が出てきて山にかかり、浦島太郎は鶴になって昇天したという。
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マツ,カイブツ 1922年 岩手県 上閉伊郡栗橋村字古里に大きな松の木があり、日光を遮っていた。耕作物の邪魔になるので伐り倒そうとしたが、次の日になると元に戻っていて伐ることができなかった。ある日夢に一人の翁が現れ、木の伐屑を毎夕方に焼き棄てれば成就すると告げた。言うとおりにすると木は倒れ、それを用いて船を造った。しかし、不思議なことに船は一夜のうちに姿を消してしまった。あるとき、漁夫が橋野川の川上で得体の知れないものを見つけ、大权で突き刺した。一度帰り、次の日再び現場に行くと何もいなかった。探している内に漁夫は狂い、あたりは風雨となり大洪水が起こった。一夜たつと河口に突如として奇岩が現れた。人々は、漁夫の突き刺した怪物の化身だと言い囃した。
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(シラハノヤ) 1981年 京都府 正徳5年8月20日、仙洞御所の庭に虚空から白羽の矢が1本降ってきた。矢は御叡覧され、めでたい事であると、和歌を添えて石清水八幡宮に奉納された。
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オシドリ,オンナ 2002年 栃木県 昨日この池で鷹に鴛を獲らせた。そのまま雨のためにここに一泊すると、夢の中に女が出てきて、白い芦の葉を渡された。見ると虫食いの歌があり、あそ沼で菰に隠れて独り寝するのはつらいとあった。そこで夢が覚め、鴛の女鳥と確信した。不憫に重い、その跡で弔いをした。
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ヒノタマ 1999年 宮崎県 1918年の夏のこと。大変な旱魃でみな困っていた。ある晩9時くらいのこと。山がパーッと明るくなったと思うと、お盆程度の大きさのオレンジ色の火の玉が現れ、真っ赤な火の粉を撒き散らしながら西へと飛んでいった。この火の玉は自分の田に水盗みをしていた男を脅かし、雲雀山地区を一周して熊野神社のごまさんの森に消えた。集落中の人がこの火の玉を目撃し、大評判になった。それから数日後、恵みの雨が降り、田植えも無事行われた。
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キツネ 1933年 広島県 昔、八という車曳きがいた。仕事を終わらせて金を調べるために柴の葉が二枚入っていた。ある日、八が30前後の年増の女を乗せ、藪のところで降ろしたら、女の姿がすぐに消えてしまった。不思議に思って調べてみると、取ったばかりの柴の葉が入っていた。
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アヤシキトリ,キツネ 1974年 京都府 兼好法師が内の宿直から退出しようとした際、萩の戸の庭の方に怪しげな鳥が羽をふって、嘴を怒らして飛び下ってきた。人々が恐れていたので法師が2羽を弓で打ち落としたところ、一つは足に黒い毛が生えており、もう一つは非常に赤い色をしていたという。博士を呼んでこの鳥の名前を聞いても答えられず、しばらくすると2羽とも狐になって消えたという。
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カメ 1976年 青森県 明和6年8月、奥州津軽の浜辺を百姓が歩いていると、亀が鳥に襲われ殺されそうになっていた。百姓は鳥を追い散らし亀を助け海に戻した。その夜、夢に童子が現れ、恩を報じたいので、卜檀という薬木を奉りたい、浜に来て欲しいという。眼が覚め浜に行くと、亀が現れ木の枝のような黄色い物をくわえてきた。津軽の領主がそれを聞き付け、医者に見せたところ、本草にはあるが、いまだ見たことがある人がいないといった。
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オオタケ 1975年 静岡県 元禄の頃、駿河国府中の寺の庭に一夜の内に仮山のようなものができた。怪しんで見ていると、1両日たって、近くに竹林がないのに筍が生えた。そのうち竹に成長し、目算で3尺周りほどになり、見物人も訪れるようになった。寺の僧が竹を切ったので、人々は竹を配分して思い思いの器を作った。
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オシドリ 2002年 異国にも同様の話がある。故国の傍に住んでいた猟師が、鴛を射て獲った。その鴛の雌は深く悲しんで、日暮れ独りで3年の間泣いていた。それを射落としてみると、射獲られた雄の足を羽蓋の下に抱いていた。猟師はこれを哀れんで貴い人を頼んで鴛を弔う方法を授てくれと言うと、法花の要文を唱えよとのことだった。朝暮怠らず読踊すると、その鴛が天人に生まれ変わるのを夢に見た。
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